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2020.05.25

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では添削しますね。今回も本当に素晴らしい答案です。

>2009年
>第2問
>A
>⑴ア―フランス イ―イギリス ウ―スペイン

とくに問題ないでしょう。正解です。

>⑵イはイモ類の自給率の高いため、冷涼な気候でジャガイモの生産の盛んなイギリス、ウは野菜類・肉類の自給率が高いため、温暖な気候を利用した輸送園芸農業や養豚の盛んなスペイン。(85字)

とてもいいですね。90字という制限に対し、イギリスとスペインの2か国について説明するため、各国45字ずつを意識したらいいですね。

(2)の方ではホイットルセー農牧業区分を答えることが重要となりますが、こちらの(1)はそうでもなさそうですね。イギリスは酪農、スペインは地中海式農業ですが、表中の作物(穀物やイモ類、野菜)とはあまり関係ありません。

まずイギリスの特徴について。まず冷涼であることが挙げられますね。さらに(氷河に削られ)地力に乏しいこともポイントになるかもしれません。これらは、やせた土壌や厳しい環境にも適応するジャガイモの生産と関連づけられます。

さらに、こちらが実は非常に重要になるのですが、イギリスは世界で最も生産性の高い農業を行っている国の一つです。農業就業人口割合が極めて低い(1%)であることはよく知られていると思います。省力化が進み、労働生産性が高くなります。

さらに大規模化が進み、農業従事者当たりの農地面積も広いものとなります。以前は小麦を輸入していましたが、現在は輸出国となっています。EUの共通農業政策の恩恵を最も受けた国といえます。ただ、本問の時点では穀類の自給率は「99%」であり、輸出については触れない方がいいかもしれませんね。穀物生産が増加し、農業収益が上がったイギリスは、今度は農業後進地域への援助金の負担を強いられることになります。農業支出金の負担増も、この国のEU離脱の一つの要因でした(このような国際政治に関する話題は、東大論述では問われないので、簡単に知っておけば十分です)。

以上のことを踏まえてまずイギリスについて記述しましょう。

イはイギリス。大規模で生産性の高い小麦栽培が行われる。冷涼な気候でイモ類の生産も多い。(43字)

後半はスペインですね。これも非常にいいと思います。スペインは豚の世界的な飼育国ですから、これに触れるのは適切です。また、温暖な気候と野菜の生産を結びつけるのも正しく(例えば同様の例にメキシコがあります。メキシコのアメリカ合衆国向けの主要輸出品目の一つが野菜です)、さらにこれを「輸送園芸農業」としている点も素晴らしいと思います。先ほど、本問においてはホイットルセー農牧業区分は問われていないとは言いましたが、もちろんこうした農業区分に関するキーワードを入れるのは賢明な方法に思います。

ウはスペイン。温暖な気候を利用しての輸送園芸農業や養豚が盛ん。野菜や肉類は輸出される。(43字)

自給率が100を超えているので、ここではあえて「輸出」を強調してみました。

>⑶オランダは国土の4分の1がポルダーと呼ばれる干拓地であり、また国土が氷食地であるため穀物生産が少なく酪農が盛んである。(59字)

悪くありません。ただ、基本は「ホイットルセー農牧業区分」です。常にホイットルセー農牧業区分を軸にして論述するクセをつけておいてくださいね。

オランダで穀物栽培があまり行われない理由は、この国が「園芸農業」と「酪農」が盛んであるからです。地形環境や自然条件ではなく、いきなり農牧業区分で結論づけることに違和感を感じるかもしれませんが、これが地理の論述問題というものなのです。(1)が「農業生産の面」から問うているのに対し、この(2)は「農業の特徴」ですよね。問われかたの違いに注意してください。

この二つの農牧業区分について、さらに「国土の特性」と紐付けて解答(回答)することが求められています。

以下のことは知っておいていいと思いますよ。

酪農・・・海面下の低地(つまりポルダー)にて行われる。アジアならばこうした干拓地は水田として利用されるが、オランダにおいては牧草地となる。水捌けの悪い低湿地であり、根腐れが起きるため作物栽培には適さない。牧草地と利用され、家畜飼育が行われる。

園芸農業・・・野菜が一般的な作物となるが、オランダにおいては花卉や球根を考えるといい。とくに球根はかつて家畜の飼料として大きな需要があり、我々の想像以上に重要な作物。沿岸の砂丘において栽培されている。

これらをふまえて文章を作ってみましょう。

海面下の干拓地が広く、牧草地として利用され酪農が行われる。海岸沿いには砂丘が広がり、野菜栽培など園芸農業が行われる。(58字)

結局球根ではなく、表中にもある野菜を文に組み入れてみました。こちらの方がベターだったと思います。

>※模範解答には海岸砂丘のことが書いてありましたが、思いつかなかったため注目する部分を減らしました。あと、質問なのですが野菜の自給率が高いのは海岸砂丘の要因ではなくできるだけ生産額が高くなるものを栽培するオランダの農業政策が要因だと思うのですが、先生の意見をお聞きしたいです。

砂丘での園芸農業は知っておいてもいいですよ。実はここ、ポイントだったんじゃないかなと思います。とても重要なことなんですよ。

もちろんオランダは国土の有効利用のため、土地収益性の低い(要するに安い)穀物の栽培は避け、輸出用の肉類や乳製品、野菜などの生産に特化してきた国です。優音さんの考え方は正しいですよ。「農業政策」、これは絶対的なことです。

本問は「国土の特性」の面から野菜栽培を砂丘と結びつけて記述することがポイントとなりましたが、今後は経済と関連させて説明を求める問題が出題されることがあるかもしれません、その際は収益性に注目して論述したらいいですね。

ちなみに「氷食地」がキーワードになる国はデンマークですね。土地が痩せているにもかかわらず、協同組合による合理的な農業経営によって生産性を高めて行った国です(小麦の輸出国)。

>⑷下位10道県は米の単作が盛んな地域であり、コメは熱量が高いが価格が安いため熱量に比べて生産額が低くなるから。(55字)

とてもいいですね。まさにその通りです。米は栄養価やカロリーの高い「万能の農作物」ですが、穀物であるがゆえ価格は安いですからね。

ただ、あえていえば「これらの道県に共通する農業の特徴」に対する受け応えがちょっと弱いように思います。もちろんここでは「米の単作」という言葉でそれを表しているのでしょうが、もうひと押し欲しかった気もします。

熱量に比して価格の安い米の生産が盛ん。大都市圏から離れ広大な農地を有し、冬の農業が振るわない水田単作地域である。(56字)

かなり強引に詰め込んでしまった印象ですが。「広さ」と「水田単作」を含めてみました。厳密には北海道は野菜栽培や畜産も盛んなので水田単作とは言い切れないのですが、特に問題はないでしょう。文字数に余裕があれば「寒冷であり冬に農業が困難であるため、水田単作となる」といったようなことも説明したかったんですけどね。

>⑸それ以外の県は温暖な気候を生かした促成栽培を行い、流通量の少ない時期に出荷して出荷価格を高めため生産額が上がるから。(59字)

「野菜」という言葉を使った方が良かったでしょうね。促成栽培だけではわかりにくいと思います。「流通量の少ない時期に出荷して出荷価格を高めた」という表現はとても上手だと思います。コンパクトに言いたいことがまとめられています。ただ、ここでは上記のような「野菜」、さらにそれらがナスやピーマン、トマト、キューリなどの「園芸野菜」であることにも言及した方が良かったかなとは思います。もちろん字数制限があるので全ては言い尽くせませんが。

ホイットルセー農牧業区分を国内の農業において持ち出すことは不要ですが、本問ではあきらかに「関東地方=近郊農業」「四国・九州=輸送園芸農業」の対比がなされています。「園芸農業=近郊農業+輸送園芸農業」であり、輸送園芸農業という言葉を使うとより適切だったでしょう。

熱量に比して価格の高い野菜栽培が盛ん。大都市圏から遠方にあり、温室での促成栽培を中心とした野菜の輸送園芸農業が行われる。(60字)

このような文をつくってみました。参考にしてください。

>B
>⑴ア―インドネシア イ―ベトナム ウ―タイ エ―フィリピン

>⑵ア国は植民地時代商品作物栽培が中心で、独立後食糧不足解消のため主食の米の時給を最優先とし、高収穫品種が導入されたため。(60字)

これは本当によく書けていますね。たいしたものです。素晴らしいですよ。これ、かなり書きにくかった問題だと思います。インドネシア特有の米に関する状況などとくにありませんからね。一般論を書くしかなかったとは思います。とてもいいです。

逆にタイやベトナムの方が書きやすかったかもしれませんね。タイは雨季と乾季が明瞭で、一年一作しかできなかったのですが、灌漑施設の整備によって二期作が可能になりました。

ベトナムも同様に灌漑による二期作が普及したうえ、市場経済化の導入によって輸出用の作物の生産に力が入れられ、米の商業的栽培が拡大しました。

>C
>国内の所得水準が上昇したことで肉類の需要が増加し、その結果家畜の飼料としての大豆が国内生産分のみでは足りなくなったため。(60字)


これも素晴らしいです。実に正しい解答です。十分な合格点がもらえますよ!

それを踏まえて少し細かい指摘をしていきますね。

まず「所得水準が上昇」とありますが、これは一般的には「向上」とした方が適切でしょう。同じ意味ではあるのですが。

さらに「需要」については「消費」とした方がいいですよ。需要という言葉は避けた方がいいです。

地理においては、実は「供給」と「消費」が同じ意味で使われるのです。

例えば、国内で使われたエネルギーについて「エネルギー供給」という場合も、「エネルギー消費」という場合も、両方あります。「日本はエネルギー生産は少ないが、エネルギー供給の多くを海外資源の輸入に依存している」のように。

おそらく優音さんは、本来の意味(国語の辞書的な意味)で需要という言葉を使っているのでしょう。「ニーズ」というか、「必要性」というか。

しかし、ここは地理の専門用語的な言い回しとして、「消費」という言葉を使ってもおかしくないシチュエーションならば、消費とするべきです。

だから「肉類の消費が増加し」としてください。ニュアンスがちょっと違ってしまうかもしれませんが、意味的には問題ありませんよね。先にも述べたように「消費=供給」なんです。で、まさに国語的な意味にはなりますが「需要」と「供給」は反対語ですよね。でも、繰り返しますが「消費=供給」なので、上の文脈については「肉類の供給が増加し」ともいえるわけです(この言い方、正しいのです。地理的な言い回しと思ってください)。

つまり「肉類の供給が増加し」と「肉類の需要が増加し」という文脈が同じ意味を示してしまう。「供給」と「需要」は反対語なのに???

このような混乱を避けるため、地理においては「需要」という言葉は切り捨ててしまった方がベターに思います。政治経済という科目においては需要と供給のバランスから価格が決定されると学習するわけですよね。だから政治経済では「需要」は必須ワードです。でも地理ではそんなことは言いません。「国内市場に供給され、国民がそれを消費する」という言い方こそ、地理の言い回しなのです。

「国内」も「国民」の方がいいでしょう。また、「所得水準の向上」→「肉類の消費の増加」ではちょっと飛躍がありませんか?ここに「食生活の変化」を挟み込むのです。

さらに次には「その結果」とありますが、このような接続詞的な表現は論述問題では不要です。単純に文をつなげてしまった方がスッキリします。

以上より、こういった文章ができます。

国民の所得水準の向上によって食生活が変化し、肉類の消費が増加した。飼料となる大豆の供給が国内生産だけでは不足し、外国からの輸入に依存するようになった。(75字)

ここから文字数を減らしていきましょう。まず「国民の」は不要でしょう。そもそも国民の所得水準であるのは当たり前ですからね。これをカット。さらに「よって」を「より」にし、句点もカットしましょうか。そして最初の文は体言止め。「供給」もカットしましょうか。意味は通じるとおもいます。

二つ目の文も句点はカット。さらに輸入はそもそも外国からするものですから、「外国からの」もカット。「依存するようになった」も文字数がもったいないですよね。「輸入が急増した」としていいかもしれませんね。

所得水準の向上により食生活が変化し肉類の消費が増加。飼料となる大豆が国内生産だけでは不足し輸入に依存するようになった。(59字)

所得水準の向上により食生活が変化し肉類の消費が増加。飼料となる大豆が国内生産だけでは不足するだめ、輸入が増加した。(57字)

こんな感じでしょうか。これで字数制限以内に収まったと思います。参考にしてください。



(追記)
赤本の模範解答には「需要」という言葉がありますが、これについては「消費」という意味で用いているのではなく、許容範囲かとは思います。それでも僕はあまり好きな言い回しではありませんね。ここも思い切って「大豆の供給」としてしまっていいとは思います。

もし青本の方も持っていたらそちらもみてください。そこでは「肉類消費」という言い方になっています。大豆についてもシンプルに「大豆が不足し」と表現しています(「大豆の需要が不足し」ではなく)。こちらは予備校の先生が書かれた解説書のようですので、やはり受験テクニックを意識した解答例になっているのでしょう。どうしても使わなければいけない(それこそ、価格決定のシステムの説明として需要と供給を対比させて説明するなど)場合は仕方ないにしても、今後は需要という言葉はちょっと控えて、供給という言葉をうまく使いこなしてほしいと思っています。


では、さらに論述対策、進めていきましょう(^^)

  • 2020.06.04 22:43
  • たつじん

優音さん、こちらでしたね。数日中に添削しますね。今しばらくお待ちを。

(コメント数を3にするために書き込んでいるだけですので、返信は不要ですよ(^^)

  • 2020.06.01 12:58
  • たつじん

すみません、A⑷に誤字がありました。
⑷下位10道県は米の単作が盛んな地域であり、コメは熱量が高いが価格が安いため熱量に比べて生産額が低くなるから。(55字)

  • 2020.05.29 11:26
  • 優音

2009年
第2問

⑴ア―フランス イ―イギリス ウ―スペイン
⑵イはイモ類の自給率の高いため、冷涼な気候でジャガイモの生産の盛んなイギリス、ウは野菜類・肉類の自給率が高いため、温暖な気候を利用した輸送園芸農業や養豚の盛んなスペイン。(85字)
⑶オランダは国土の4分の1がポルダーと呼ばれる干拓地であり、また国土が氷食地であるため穀物生産が少なく酪農が盛んである。(59字)

※模範解答には海岸砂丘のことが書いてありましたが、思いつかなかったため注目する部分を減らしました。あと、質問なのですが野菜の自給率が高いのは海岸砂丘の要因ではなくできるだけ生産額が高くなるものを栽培するオランダの農業政策が要因だと思うのですが、先生の意見をお聞きしたいです。

⑷下位10道県は米の単作が盛んな地域であり、コメは熱量が高い画家カウが安いため熱量に比べて生産額が低くなるから。(55字)
⑸それ以外の県は温暖な気候を生かした促成栽培を行い、流通量の少ない時期に出荷して出荷価格を高めため生産額が上がるから。(59字)


⑴ア―インドネシア イ―ベトナム ウ―タイ エ―フィリピン
⑵ア国は植民地時代商品作物栽培が中心で、独立後食糧不足解消のため主食の米の時給を最優先とし、高収穫品種が導入されたため。(60字)

国内の所得水準が上昇したことで肉類の需要が増加し、その結果家畜の飼料としての大豆が国内生産分のみでは足りなくなったため。(60字)

  • 2020.05.29 11:20
  • 優音

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