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2020.05.28
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コメント
>では添削しますね。問題のセレクトが良かったと思いますよ。非常にオーソドックスで基本的な論述力を身につけるには最適です。
>A 1年間を通して降水量が多く、スコールというゲリラ豪雨がしばしば起こる高温多湿な地域である。(46字)(熱帯雨林気候と間違えて記述)
そうでしたか。では、ひとまず熱帯雨林気候の説明とみて、添削しますね。
「気候」要素といえば、「気温」と「降水量」、そして「風」ですね。気温と降水量について明確に書くことが求められます。文字数に余裕があれば風すなわち気圧帯(熱帯収束帯や亜熱帯高圧帯)や風系(貿易風など恒常風、あるいは季節風)についても言及できるとは思います。
まず気温について。「年中高温」で十分でしょう。「気温年較差が小さい」まで触れることも可能です。
さらに「降水量」について。こちらも「年中多雨」ですね。「スコール」について記述しているのはとてもいいことですよ。ただ「ゲリラ豪雨」ではやや不正確に思います。ゲリラ豪雨は、都心部においてヒートアイランド現象が原因となる突発的な低気圧の発生によって、突然見舞われる豪雨のことです。赤道付近でみられるスコールは、同じ豪雨とはいえ、ほぼ毎日午後に「規則的に」みられるもので、ゲリラという言葉のもつイメージとは乖離しています。ここは「局地的な豪雨」とすればいいですし、字数に余裕があれば「毎日午後に降る」のような形容をしてもいいと思います。
せっかくなので、風に関する話題として「熱帯収束帯」という言葉も使ってみましょうか。
こんな感じになりますね。
熱帯収束帯の影響が強く、年間を通じて高温多雨。気温年較差が小さい。毎日午後に局地的な豪雨であるスコールに見舞われる。(58字)
さて、ではここからは本来の正解であるサバナ気候について。aはベトナム南部ホーチミンですね。ここ、必ずチェックしておいてください。ベトナム国土は南北に長く、北部で温帯(ハノイ。温帯冬季少雨気候)、南部で熱帯(ハノイ。サバナ気候)となります。bの判定はやや難しいのですが、良かったら地図帳などでブラジルにみられる気候区分を確認しておくといいですよ。実は熱帯雨林気候の範囲は狭く、広い範囲で雨季と乾季がみられる気候となっています。
サバナ気候に関する説明はこのような形でしょう。
年中高温。夏は熱帯収束帯の影響で雨季、冬は亜熱帯高圧帯の影響で乾季となる。
ただ、これだけでは字数が余ってしまうので、もう少しアレンジを。ここで注目すべきはaを含むインドシナ半島。気圧帯の季節的な移動で雨季と乾季の説明をしてしまってもいいとは思うのですが、モンスーンアジアという立地上の特色を考えた場合、ここは季節風に言及してもいいかなとは思います。
またこのような低緯度地域は、「冬」といっても寒いわけではないので、ややイメージが異なってしまいます。熱帯の季節については、夏を「高日季」、冬を「低日季」と呼ぶ方が一般的です(ただ、赤道直下の地域で本当に太陽高度が高いのは春や秋なんですけどね。私もこの言い方はよくわかりません)。
以上より、次のような文章にしてみました。
年中高温。高日季は海からの季節風や熱帯収束帯の影響で雨季、低日季は陸からの季節風や亜熱帯高圧帯の影響で乾季。(54字)
「雨季」ではなく「多雨」、「乾季」ではなく「少雨」とするべきだったかもしれませんが、サバナ気候の一般的な定義「明確な雨季と乾季がみられる」をニュアンスとして含みたかったのでこのようにしてみました。
厳密には「多雨=湿潤」、「少雨=乾燥」というわけではありませんものね。湿潤は「降水量>蒸発量」であり、高温地域では雨が比較的多くても乾燥する可能性はありますし、乾燥も「降水量<蒸発量」であることから、こちらも同様に雨が少なくても冷涼ならば湿潤です。ただ、ここまで詳細に述べることは必要ではなく、シンプルに「多雨=湿潤=雨季」、「少雨=乾燥=乾季」としてしまって咎められることはないと思われます。
>B aでは大河川流域の沖積平野で労働集約的に自給用の米を栽培している。bでは農場主に雇われた労働者が大農園で商品作物を栽培するプランテーション農業が展開されている。(81字)
いいですね。ホイットルセー農牧業区分のキーワードがしっかりと使われています。
aは「アジア式稲作農業(集約的稲作農業)」。「自給的」「集約的」「家族中心の零細経営的」が特徴です。
これに対して南米など新大陸は「商業的」「粗放的」「企業的」が特徴です。ただ、問題の指定語句をみるに、ここでは「プランテーション農業」について言及することが求められているようで、「粗放的」という言葉は相性が悪そうです。こちらは(同じく新大陸の農牧業形態である)企業的穀物農業や企業的牧畜にはジャストミートする言葉なのですが、いくら大農園とはいえ、ある程度面積が限られているプランテーションについては必ずしもヘクタールあたりの生産額が小さいとは言いにくいですからね。さらに、企業的もプランテーション農業についてはあまり用いない言葉です(むしろ確実に企業が経営していると思うのですけどね。なぜか使いません)。一方で「商業的」は大きく強調される言葉ですので、こちらはマストとして。
農作物についてはここは「サトウキビ」が適当でしょう。コーヒーの栽培地はブラジル高原南部ですので、該当しません。ヨーロッパから早い段階で入植が進んだ低緯度の沿岸部はサトウキビの栽培地域です。カカオも間違いではありませんが、ブラジルの主要栽培品目ではないので外すのが無難です。また、大豆やトウモロコシといった穀物類はプランテーションで栽培されるものではありません。
では文章を作ってみましょう。90字制限ですので、45字ずつで。
aは集約的稲作農業。沖積平野に水田が開かれ米が栽培。家族中心の零細経営で集約的に行われる。bはプランテーション農業。大土地所有制による大農園で商業的にサトウキビが栽培される。(87字)
「大土地所有制」も南米とくにブラジルの農業を説明する際によく用いられる言葉です。一部の富裕な地主によって土地が独占され(ヨーロッパからの移住者の子孫であることが多い)彼らが開いた大農園において小作農(土地をもたない農民)や農業労働者(契約によって農繁期などに雇用される農民)が働いています。
あるいは「ファゼンダと呼ばれる大農園」としても良かったかもしれませんね。ファゼンダはブラジルの大農園です。
C 多量の雨によって土壌に含まれた栄養分が流されて、鉄やアルミニウムなどが表面に露出するから。(45字)
これも適切です。さらに加えるなら「赤色」や「酸性」ですかね。
赤色の酸性土壌。高温で有機物の分解速度が速く腐植が形成されにくい。多雨により有機養分が流出し地表面に酸化した金属が残存。(60字)
熱帯は高温のため微生物の活動が活発で、有機物の分解が速く進みます。このため、腐植層が形成されません。このことも含めて説明してみました。
D 分かりませんでした。
とてもいいですね。分からない問題について無駄に時間を費やすより、割り切って諦めてしまい、他の問題に取り組んだ方がいいですよ。
問題のセレクトがとても良かったです。ケッペンの気候区分、ホイットルセー農牧業区分、土壌など非常にオーソドックスなところが問われている優れた問題です。かなり実力がつきますよ。さらにいろいろな問題にチャレンジしていきましょうね。
- 2020.06.02 19:52
- たつじん
東大 1998年 第1問
A 1年間を通して降水量が多く、スコールというゲリラ豪雨がしばしば起こる高温多湿な地域である。(46字)(熱帯雨林気候と間違えて記述)
B aでは大河川流域の沖積平野で労働集約的に自給用の米を栽培している。bでは農場主に雇われた労働者が大農園で商品作物を栽培するプランテーション農業が展開されている。(81字)
C 多量の雨によって土壌に含まれた栄養分が流されて、鉄やアルミニウムなどが表面に露出するから。(45字)
D 分かりませんでした。
- 2020.05.29 11:29
- みやし
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