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2020.05.28
投稿フォーム91
コメント欄に、入試問題の大学名と年度、問題番号を書き、それに続けてあなたの解答をペーストしてください。こちらのフォームが他の投稿者によって既に使用されている場合は、他のフォーム(未使用)をご利用ください。投稿後、1週間を目処に添削回答いたします。もし1週間たっても回答がない場合、私が見落としている可能性がありますので、ツイッター(@ts914)にDMをいただけますでしょうか。早々に対応いたします。
コメント
>こんにちは。添削いたします。
>東大 1995年 第一問
>設問A
>(1)ヴォルガ川
正解です。ヴォルガ川はヨーロッパ最長の河川ですので、地図帳でチェックしておくといいですね。モスクワを中心としたロシア平原を流域に収め、カスピ海へと流れ込みます。カスピ海のような外海へと流出河川のない湖を「内陸湖」と言い、内陸湖に注ぐ河川を「内陸河川」と言います。ヴォルガ川はその典型例ですね。カスピ海周辺地域(同時にヴォルガ川の河口付近でもあります)の乾燥がいかに激しいかが想像できます。
>(2)地形は先カンブリア時代に地形が形成された安定陸塊のロシア卓上地で低地。気候は上流でスッテプ気候、黒色のチェルノーゼムが広がる。下流では亜寒帯湿潤気候で灰褐色のポドゾルが広がる。
とてもいいですね。自然環境について「地形」と「気候」の両面から攻めています。「自然環境=地形+気候」であることを常に意識してください。
前半を地形、後半を気候と明確に分けている点も好ましいです。さらに気候は二つの文に分けて、上流と下流とを別の文にしています。これも潔く、わかりやすいです。こうした短文で言い切る文章の組立はこれからも使っていきましょう。
地形についてはまさにその通りです。ロシアのウラル山脈以東の地域は「東ヨーロッパ平原」ではあるのですが、これについては「ロシア卓状地」という言い方をしても構いません。
安定陸塊のうち、古代の岩盤がそのまま露出したものが「楯状地」、それに地層が重なった後に侵食を受け、平坦な地形になったものが「卓状地」です。さらに長期間の侵食によって平坦化された低地を「構造平野」と呼ぶと考えてください。
細かい話をしていきますと、楯状地や卓状地はその形から生まれた名称であり、構造平野はその成因(この場合の「構造」とは地層のことです。地層が侵食され平坦化した地形なのです)から生まれた名称です。だから本来は同列に語っていい言葉ではないのですが、地理では便宜上、「安定陸塊=楯状地+卓状地+構造平野」と考えています。
ただ、これらの地形については非常に区分があいまいで、定義しにくいところもあります。
唯一、楯状地だけは明確で、楯状地の主なものとして、スウェーデンとフィンランドの「バルト楯状地」、ラブラドル半島の「カナダ楯状地」を知っておきましょう。
ロシアのウラル山脈以東の地域(つまりヴォルガ川の流域ですね)は、東ヨーロッパ平原です。この地形については古い岩盤の上に地層が堆積し(つまり一旦海底になっているのですね)、それが隆起した後、侵食を受け、平坦な地形となりました。形状としては「卓状地」であり、形成のされ方としては「構造平野」となります(ただ、こういった細かいことは考えなくていいです)。
ですので「安定陸塊」「ロシア卓状地」「低地」は全て正しいです。ロシア卓状地を「東ヨーロッパ平原」にして「構造平野」としても正しくなります。いずれにせよ、厳格な定義がされているわけでもなく、どちらを使っても問題ないはずです。
なお、「先カンブリア時代」という言い方はいいのですが、「地形が形成」ではなく「造陸運動を受けた」としてみてはどうでしょう。
・安定陸塊・・・先カンブリア時代に造陸運動を受けた
・古期造山帯・・・古生代に造山運動を受けた
・新期造山帯・・・中生代後期以降に造山運動を受けた
それぞれ、以上のような表現が適当です。
さらに気候ですが、これは上流と下流が反対なのでは?上流がステップ気候すなわち乾燥気候でしたら「降水量<蒸発量」ですから、そもそも河川が流れ出すことはありません。ヴォルガ川は、上流が湿潤、下流が乾燥という外来河川の一つなのでしょう。
また「亜寒帯湿潤気候」という言い方はメジャーではありませんね。ここは普通に「冷帯湿潤気候」でいいですし、あるいは単に「冷帯」でもいいかと。冷帯には他に「冷帯冬季少雨気候」というシベリア地域特有(強い高気圧の発生で冬季は降水がみられない)の気候区もありますが、「普通の冷帯気候」である冷帯湿潤気候についてはさほど厳密に言及することもないかと思います。文字数制限との相談ですね。ポドゾルは正解ですが、色については「灰白色」が一般的でしょう。
下流側の「ステップ気候=黒土=チェルノーゼム」はその通りです。
地形は先カンブリア代に造陸運動を受けた安定陸塊。ロシア卓状地の低平な地形。気候は上中流域で冷帯湿潤気候。土壌は灰白色のポドゾル。下流はステップ気候。黒土のチェルノーゼムが分布。(88字)
こんな感じでしょうか。
>(3)ソ連がアムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。地下水流入量は変化なし、湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。両者は原因ではない。
これも惜しいですね。固有名詞を使う場合には細心の注意をしてください。自身がなければ書かない。固有名詞を書かなければ減点対象とはならないのに、間違って使っていればそこはマイナスにするしかありませんもんね。
カラクーム運河はアラル海の西方、トルクメニスタンからカスピ海に達するものです。タジキスタン方面のアムダリア川、キルギス方面のシルダリア川とは遠く離れています。地図帳で確認する、というより、知らなくていい言葉だと思います。
他の部分に関しては概ね正しいと思います。非常によく記述できていますので、十分な合格点がもらえるでしょう。
細かいところを。
>ソ連
これは素晴らしいですね。中央アジアの綿花栽培地域の拡大はソ連時代の自然改造計画によるものです。これに言及できたということは理解が深いと思います。
>アムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。
先も述べたようにカラクーム運河は関係ありません。しかし「綿花」に触れている点はベストです。これは必須ワードでしょう。
>過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。
これも上手い書き方です。「過度の取水」という言い方はさりげないですが、なかなかできるものではありません。書き方のコツがわかっていますね。
>地下水流入量は変化なし、
グラフをしっかり読解できています。いいですね。
>湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。
なるほど、これは上手いですね。まさにその通りだと思います。いいところに気づきました。対象となる面積が小さくなれば、その分だけ降水量も減りますからね。
>両者は原因ではない。
この言い切りもいいと思います。本問は「降水量」の使い方が難しかったのですが、このように「降水量の減少が原因ではない」と言い切ってしまうことは、むしろ最適解だったのではないかと思います。出題者側の意図を想像するに、降水量についても何か言及する必要があったのかも知れませんが、事実としてほとんど関係ないわけですからね。とてもいいと思います。
こんな感じにしてみました。
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培地域の拡大がなされ、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われたが、過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小した。湖面面積の縮小の度合いに伴って、湖面降水量も減少しているが、湖面縮小の直接的な原因ではない。(141字)
これを制限字数以内に縮めるわけですが、
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培のため、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われた。過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小。湖面降水量は、湖面縮小に伴いその分だけ減少している。(112字)
なんとも締まりのない文章になってしまい申し訳ありません。やはり120字ですと、余裕をもって文章を組み立てることができますね。
>設問B
>(1)自動車排気ガス。二酸化窒素濃度が平均より高く二酸化硫黄濃度が低い都市部だから。
これはいいですね。あえていえば「排気ガス」ですと「気」と「ガス」が意味的に重複しますので、ここは「排ガス」でいいでしょう。
>(2)産業構造の変化で、汚染の固定発生源である重工業が縮小、規制もなされたことにより硫黄酸化物は減少。一方、都市部への人口集中で宅配便等の物流が発達。非固定発生源による窒素酸化物は増加。
これもうまいですね。これは満点ではないでしょうか。「産業構造」について変化と書いた点がまず的確です。この言葉については「産業構造の高度化」という場合がよくあるのですが、これは「第1次産業→第二次産業→第三次産業」というように、農業→工業→商業と国内経済の中心が移行していくことを指す特別の言い方ですので、本問で話題とされている「重工業からの転換」については、特別な言い方ではなく、単に「産業構造の変化」として正しかったと思いますよ。注意してくださいね。
さらにここからはシンプルに「規制もなされた」とあります。詳しい内容に触れる必要はなく、これで十分です。後半も適切です。「人口集中」「物流」の使い方もいいでしょう。
規制の強化や技術の向上により二酸化硫黄の固定発生源であった工場からの排出は減少。一方、産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加した。(97字)
ちょっと字数がオーバーしましたね。調整してみましょう。
規制の強化や技術の向上で二酸化硫黄の固定発生源である工場からの排出は減少。産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加。(89字)
このような形にはなると思います。本問は「石炭の燃焼→二酸化硫黄」「自動車の排ガス→二酸化窒素」という組み合わせがわかっているかどうかが解答のポイントでしたね。前者は法律の整備、脱硫装置の設置などにより克服されましたが、後者は自動車が増加していることもあり有効が対策がありません。今後は電気自動車の普及で状況が変わるのかもしれませんが。
>これからはもっと頻度を上げられると思いますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
全体的によく書けていましたよ。これからもどんどん投稿してくださいね。
- 2020.06.09 21:56
- たつじん
(間違えて連続投稿してしまいました。2つの投稿は内容は同じです)
- 2020.06.09 21:29
- たつじん
>こんにちは。添削いたします。
>東大 1995年 第一問
>設問A
>(1)ヴォルガ川
正解です。ヴォルガ川はヨーロッパ最長の河川ですので、地図帳でチェックしておくといいですね。モスクワを中心としたロシア平原を流域に収め、カスピ海へと流れ込みます。カスピ海のような外海へと流出河川のない湖を「内陸湖」と言い、内陸湖に注ぐ河川を「内陸河川」と言います。ヴォルガ川はその典型例ですね。カスピ海周辺地域(同時にヴォルガ川の河口付近でもあります)の乾燥がいかに激しいかが想像できます。
>(2)地形は先カンブリア時代に地形が形成された安定陸塊のロシア卓上地で低地。気候は上流でスッテプ気候、黒色のチェルノーゼムが広がる。下流では亜寒帯湿潤気候で灰褐色のポドゾルが広がる。
とてもいいですね。自然環境について「地形」と「気候」の両面から攻めています。「自然環境=地形+気候」であることを常に意識してください。
前半を地形、後半を気候と明確に分けている点も好ましいです。さらに気候は二つの文に分けて、上流と下流とを別の文にしています。これも潔く、わかりやすいです。こうした短文で言い切る文章の組立はこれからも使っていきましょう。
地形についてはまさにその通りです。ロシアのウラル山脈以東の地域は「東ヨーロッパ平原」ではあるのですが、これについては「ロシア卓状地」という言い方をしても構いません。
安定陸塊のうち、古代の岩盤がそのまま露出したものが「楯状地」、それに地層が重なった後に侵食を受け、平坦な地形になったものが「卓状地」です。さらに長期間の侵食によって平坦化された低地を「構造平野」と呼ぶと考えてください。
細かい話をしていきますと、楯状地や卓状地はその形から生まれた名称であり、構造平野はその成因(この場合の「構造」とは地層のことです。地層が侵食され平坦化した地形なのです)から生まれた名称です。だから本来は同列に語っていい言葉ではないのですが、地理では便宜上、「安定陸塊=楯状地+卓状地+構造平野」と考えています。
ただ、これらの地形については非常に区分があいまいで、定義しにくいところもあります。
唯一、楯状地だけは明確で、楯状地の主なものとして、スウェーデンとフィンランドの「バルト楯状地」、ラブラドル半島の「カナダ楯状地」を知っておきましょう。
ロシアのウラル山脈以東の地域(つまりヴォルガ川の流域ですね)は、東ヨーロッパ平原です。この地形については古い岩盤の上に地層が堆積し(つまり一旦海底になっているのですね)、それが隆起した後、侵食を受け、平坦な地形となりました。形状としては「卓状地」であり、形成のされ方としては「構造平野」となります(ただ、こういった細かいことは考えなくていいです)。
ですので「安定陸塊」「ロシア卓状地」「低地」は全て正しいです。ロシア卓状地を「東ヨーロッパ平原」にして「構造平野」としても正しくなります。いずれにせよ、厳格な定義がされているわけでもなく、どちらを使っても問題ないはずです。
なお、「先カンブリア時代」という言い方はいいのですが、「地形が形成」ではなく「造陸運動を受けた」としてみてはどうでしょう。
・安定陸塊・・・先カンブリア時代に造陸運動を受けた
・古期造山帯・・・古生代に造山運動を受けた
・新期造山帯・・・中生代後期以降に造山運動を受けた
それぞれ、以上のような表現が適当です。
さらに気候ですが、これは上流と下流が反対なのでは?上流がステップ気候すなわち乾燥気候でしたら「降水量<蒸発量」ですから、そもそも河川が流れ出すことはありません。ヴォルガ川は、上流が湿潤、下流が乾燥という外来河川の一つなのでしょう。
また「亜寒帯湿潤気候」という言い方はメジャーではありませんね。ここは普通に「冷帯湿潤気候」でいいですし、あるいは単に「冷帯」でもいいかと。冷帯には他に「冷帯冬季少雨気候」というシベリア地域特有(強い高気圧の発生で冬季は降水がみられない)の気候区もありますが、「普通の冷帯気候」である冷帯湿潤気候についてはさほど厳密に言及することもないかと思います。文字数制限との相談ですね。ポドゾルは正解ですが、色については「灰白色」が一般的でしょう。
下流側の「ステップ気候=黒土=チェルノーゼム」はその通りです。
地形は先カンブリア代に造陸運動を受けた安定陸塊。ロシア卓状地の低平な地形。気候は上中流域で冷帯湿潤気候。土壌は灰白色のポドゾル。下流はステップ気候。黒土のチェルノーゼムが分布。(88字)
こんな感じでしょうか。
>(3)ソ連がアムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。地下水流入量は変化なし、湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。両者は原因ではない。
これも惜しいですね。固有名詞を使う場合には細心の注意をしてください。自身がなければ書かない。固有名詞を書かなければ減点対象とはならないのに、間違って使っていればそこはマイナスにするしかありませんもんね。
カラクーム運河はアラル海の西方、トルクメニスタンからカスピ海に達するものです。タジキスタン方面のアムダリア川、キルギス方面のシルダリア川とは遠く離れています。地図帳で確認する、というより、知らなくていい言葉だと思います。
他の部分に関しては概ね正しいと思います。非常によく記述できていますので、十分な合格点がもらえるでしょう。
細かいところを。
>ソ連
これは素晴らしいですね。中央アジアの綿花栽培地域の拡大はソ連時代の自然改造計画によるものです。これに言及できたということは理解が深いと思います。
>アムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。
先も述べたようにカラクーム運河は関係ありません。しかし「綿花」に触れている点はベストです。これは必須ワードでしょう。
>過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。
これも上手い書き方です。「過度の取水」という言い方はさりげないですが、なかなかできるものではありません。書き方のコツがわかっていますね。
>地下水流入量は変化なし、
グラフをしっかり読解できています。いいですね。
>湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。
なるほど、これは上手いですね。まさにその通りだと思います。いいところに気づきました。対象となる面積が小さくなれば、その分だけ降水量も減りますからね。
>両者は原因ではない。
この言い切りもいいと思います。本問は「降水量」の使い方が難しかったのですが、このように「降水量の減少が原因ではない」と言い切ってしまうことは、むしろ最適解だったのではないかと思います。出題者側の意図を想像するに、降水量についても何か言及する必要があったのかも知れませんが、事実としてほとんど関係ないわけですからね。とてもいいと思います。
こんな感じにしてみました。
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培地域の拡大がなされ、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われたが、過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小した。湖面面積の縮小の度合いに伴って、湖面降水量も減少しているが、湖面縮小の直接的な原因ではない。(141字)
これを制限字数以内に縮めるわけですが、
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培のため、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われた。過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小。湖面降水量は、湖面縮小に伴いその分だけ減少している。(112字)
なんとも締まりのない文章になってしまい申し訳ありません。やはり120字ですと、余裕をもって文章を組み立てることができますね。
>設問B
>(1)自動車排気ガス。二酸化窒素濃度が平均より高く二酸化硫黄濃度が低い都市部だから。
これはいいですね。あえていえば「排気ガス」ですと「気」と「ガス」が意味的に重複しますので、ここは「排ガス」でいいでしょう。
>(2)産業構造の変化で、汚染の固定発生源である重工業が縮小、規制もなされたことにより硫黄酸化物は減少。一方、都市部への人口集中で宅配便等の物流が発達。非固定発生源による窒素酸化物は増加。
これもうまいですね。これは満点ではないでしょうか。「産業構造」について変化と書いた点がまず的確です。この言葉については「産業構造の高度化」という場合がよくあるのですが、これは「第1次産業→第二次産業→第三次産業」というように、農業→工業→商業と国内経済の中心が移行していくことを指す特別の言い方ですので、本問で話題とされている「重工業からの転換」については、特別な言い方ではなく、単に「産業構造の変化」として正しかったと思いますよ。注意してくださいね。
さらにここからはシンプルに「規制もなされた」とあります。詳しい内容に触れる必要はなく、これで十分です。後半も適切です。「人口集中」「物流」の使い方もいいでしょう。
規制の強化や技術の向上により二酸化硫黄の固定発生源であった工場からの排出は減少。一方、産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加した。(97字)
ちょっと字数がオーバーしましたね。調整してみましょう。
規制の強化や技術の向上で二酸化硫黄の固定発生源である工場からの排出は減少。産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加。(89字)
このような形にはなると思います。本問は「石炭の燃焼→二酸化硫黄」「自動車の排ガス→二酸化窒素」という組み合わせがわかっているかどうかが解答のポイントでしたね。前者は法律の整備、脱硫装置の設置などにより克服されましたが、後者は自動車が増加していることもあり有効が対策がありません。今後は電気自動車の普及で状況が変わるのかもしれませんが。
>これからはもっと頻度を上げられると思いますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
全体的によく書けていましたよ。これからもどんどん投稿してくださいね。
- 2020.06.09 21:28
- たつじん
>こんにちは。添削いたします。
>東大 1995年 第一問
>設問A
>(1)ヴォルガ川
正解です。ヴォルガ川はヨーロッパ最長の河川ですので、地図帳でチェックしておくといいですね。モスクワを中心としたロシア平原を流域に収め、カスピ海へと流れ込みます。カスピ海のような外海へと流出河川のない湖を「内陸湖」と言い、内陸湖に注ぐ河川を「内陸河川」と言います。ヴォルガ川はその典型例ですね。カスピ海周辺地域(同時にヴォルガ川の河口付近でもあります)の乾燥がいかに激しいかが想像できます。
>(2)地形は先カンブリア時代に地形が形成された安定陸塊のロシア卓上地で低地。気候は上流でスッテプ気候、黒色のチェルノーゼムが広がる。下流では亜寒帯湿潤気候で灰褐色のポドゾルが広がる。
とてもいいですね。自然環境について「地形」と「気候」の両面から攻めています。「自然環境=地形+気候」であることを常に意識してください。
前半を地形、後半を気候と明確に分けている点も好ましいです。さらに気候は二つの文に分けて、上流と下流とを別の文にしています。これも潔く、わかりやすいです。こうした短文で言い切る文章の組立はこれからも使っていきましょう。
地形についてはまさにその通りです。ロシアのウラル山脈以東の地域は「東ヨーロッパ平原」ではあるのですが、これについては「ロシア卓状地」という言い方をしても構いません。
安定陸塊のうち、古代の岩盤がそのまま露出したものが「楯状地」、それに地層が重なった後に侵食を受け、平坦な地形になったものが「卓状地」です。さらに長期間の侵食によって平坦化された低地を「構造平野」と呼ぶと考えてください。
細かい話をしていきますと、楯状地や卓状地はその形から生まれた名称であり、構造平野はその成因(この場合の「構造」とは地層のことです。地層が侵食され平坦化した地形なのです)から生まれた名称です。だから本来は同列に語っていい言葉ではないのですが、地理では便宜上、「安定陸塊=楯状地+卓状地+構造平野」と考えています。
ただ、これらの地形については非常に区分があいまいで、定義しにくいところもあります。
唯一、楯状地だけは明確で、楯状地の主なものとして、スウェーデンとフィンランドの「バルト楯状地」、ラブラドル半島の「カナダ楯状地」を知っておきましょう。
ロシアのウラル山脈以東の地域(つまりヴォルガ川の流域ですね)は、東ヨーロッパ平原です。この地形については古い岩盤の上に地層が堆積し(つまり一旦海底になっているのですね)、それが隆起した後、侵食を受け、平坦な地形となりました。形状としては「卓状地」であり、形成のされ方としては「構造平野」となります(ただ、こういった細かいことは考えなくていいです)。
ですので「安定陸塊」「ロシア卓状地」「低地」は全て正しいです。ロシア卓状地を「東ヨーロッパ平原」にして「構造平野」としても正しくなります。いずれにせよ、厳格な定義がされているわけでもなく、どちらを使っても問題ないはずです。
なお、「先カンブリア時代」という言い方はいいのですが、「地形が形成」ではなく「造陸運動を受けた」としてみてはどうでしょう。
・安定陸塊・・・先カンブリア時代に造陸運動を受けた
・古期造山帯・・・古生代に造山運動を受けた
・新期造山帯・・・中生代後期以降に造山運動を受けた
それぞれ、以上のような表現が適当です。
さらに気候ですが、これは上流と下流が反対なのでは?上流がステップ気候すなわち乾燥気候でしたら「降水量<蒸発量」ですから、そもそも河川が流れ出すことはありません。ヴォルガ川は、上流が湿潤、下流が乾燥という外来河川の一つなのでしょう。
また「亜寒帯湿潤気候」という言い方はメジャーではありませんね。ここは普通に「冷帯湿潤気候」でいいですし、あるいは単に「冷帯」でもいいかと。冷帯には他に「冷帯冬季少雨気候」というシベリア地域特有(強い高気圧の発生で冬季は降水がみられない)の気候区もありますが、「普通の冷帯気候」である冷帯湿潤気候についてはさほど厳密に言及することもないかと思います。文字数制限との相談ですね。ポドゾルは正解ですが、色については「灰白色」が一般的でしょう。
下流側の「ステップ気候=黒土=チェルノーゼム」はその通りです。
地形は先カンブリア代に造陸運動を受けた安定陸塊。ロシア卓状地の低平な地形。気候は上中流域で冷帯湿潤気候。土壌は灰白色のポドゾル。下流はステップ気候。黒土のチェルノーゼムが分布。(88字)
こんな感じでしょうか。
>(3)ソ連がアムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。地下水流入量は変化なし、湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。両者は原因ではない。
これも惜しいですね。固有名詞を使う場合には細心の注意をしてください。自身がなければ書かない。固有名詞を書かなければ減点対象とはならないのに、間違って使っていればそこはマイナスにするしかありませんもんね。
カラクーム運河はアラル海の西方、トルクメニスタンからカスピ海に達するものです。タジキスタン方面のアムダリア川、キルギス方面のシルダリア川とは遠く離れています。地図帳で確認する、というより、知らなくていい言葉だと思います。
他の部分に関しては概ね正しいと思います。非常によく記述できていますので、十分な合格点がもらえるでしょう。
細かいところを。
>ソ連
これは素晴らしいですね。中央アジアの綿花栽培地域の拡大はソ連時代の自然改造計画によるものです。これに言及できたということは理解が深いと思います。
>アムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。
先も述べたようにカラクーム運河は関係ありません。しかし「綿花」に触れている点はベストです。これは必須ワードでしょう。
>過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。
これも上手い書き方です。「過度の取水」という言い方はさりげないですが、なかなかできるものではありません。書き方のコツがわかっていますね。
>地下水流入量は変化なし、
グラフをしっかり読解できています。いいですね。
>湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。
なるほど、これは上手いですね。まさにその通りだと思います。いいところに気づきました。対象となる面積が小さくなれば、その分だけ降水量も減りますからね。
>両者は原因ではない。
この言い切りもいいと思います。本問は「降水量」の使い方が難しかったのですが、このように「降水量の減少が原因ではない」と言い切ってしまうことは、むしろ最適解だったのではないかと思います。出題者側の意図を想像するに、降水量についても何か言及する必要があったのかも知れませんが、事実としてほとんど関係ないわけですからね。とてもいいと思います。
こんな感じにしてみました。
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培地域の拡大がなされ、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われたが、過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小した。湖面面積の縮小の度合いに伴って、湖面降水量も減少しているが、湖面縮小の直接的な原因ではない。(141字)
これを制限字数以内に縮めるわけですが、
ソ連時代に中央アジアの綿花栽培のため、農業用の灌漑用水としてアムダリア・シルダリア川からの取水が行われた。過剰であったため、アラル海への河川流入量が激減し、湖面面積が縮小。湖面降水量は、湖面縮小に伴いその分だけ減少している。(112字)
なんとも締まりのない文章になってしまい申し訳ありません。やはり120字ですと、余裕をもって文章を組み立てることができますね。
>設問B
>(1)自動車排気ガス。二酸化窒素濃度が平均より高く二酸化硫黄濃度が低い都市部だから。
これはいいですね。あえていえば「排気ガス」ですと「気」と「ガス」が意味的に重複しますので、ここは「排ガス」でいいでしょう。
>(2)産業構造の変化で、汚染の固定発生源である重工業が縮小、規制もなされたことにより硫黄酸化物は減少。一方、都市部への人口集中で宅配便等の物流が発達。非固定発生源による窒素酸化物は増加。
これもうまいですね。これは満点ではないでしょうか。「産業構造」について変化と書いた点がまず的確です。この言葉については「産業構造の高度化」という場合がよくあるのですが、これは「第1次産業→第二次産業→第三次産業」というように、農業→工業→商業と国内経済の中心が移行していくことを指す特別の言い方ですので、本問で話題とされている「重工業からの転換」については、特別な言い方ではなく、単に「産業構造の変化」として正しかったと思いますよ。注意してくださいね。
さらにここからはシンプルに「規制もなされた」とあります。詳しい内容に触れる必要はなく、これで十分です。後半も適切です。「人口集中」「物流」の使い方もいいでしょう。
規制の強化や技術の向上により二酸化硫黄の固定発生源であった工場からの排出は減少。一方、産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加した。(97字)
ちょっと字数がオーバーしましたね。調整してみましょう。
規制の強化や技術の向上で二酸化硫黄の固定発生源である工場からの排出は減少。産業構造の変化や物流の活発化によって交通量が増し、人口集中地域である都市部からの二酸化窒素の排出は増加。(89字)
このような形にはなると思います。本問は「石炭の燃焼→二酸化硫黄」「自動車の排ガス→二酸化窒素」という組み合わせがわかっているかどうかが解答のポイントでしたね。前者は法律の整備、脱硫装置の設置などにより克服されましたが、後者は自動車が増加していることもあり有効が対策がありません。今後は電気自動車の普及で状況が変わるのかもしれませんが。
>これからはもっと頻度を上げられると思いますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
全体的によく書けていましたよ。これからもどんどん投稿してくださいね。
- 2020.06.09 21:26
- たつじん
投稿フォーム70からの移動です。
マツケイさんの答案になります
(2020.06.02 19:46)
東大 1995年 第一問
設問A
(1)ヴォルガ川
(2)地形は先カンブリア時代に地形が形成された安定陸塊のロシア卓上地で低地。気候は上流でスッテプ気候、黒色のチェルノーゼムが広がる。下流では亜寒帯湿潤気候で灰褐色のポドゾルが広がる。
(3)ソ連がアムダリア・シルダリア川に綿花栽培が目的の農業用のカラクーム運河を建設。過度の取水を行い、アラル海への河川流入量が激減したことが原因。地下水流入量は変化なし、湖面降水量は減少しているが湖面面積の減少に伴うもの。両者は原因ではない。
設問B
(1)自動車排気ガス。二酸化窒素濃度が平均より高く二酸化硫黄濃度が低い都市部だから。
(2)産業構造の変化で、汚染の固定発生源である重工業が縮小、規制もなされたことにより硫黄酸化物は減少。一方、都市部への人口集中で宅配便等の物流が発達。非固定発生源による窒素酸化物は増加。
6月2日にいただいていますので、1週間後の9日を目処に添削いたします。今しばらくお待ちください。
- 2020.06.05 12:56
- たつじん
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