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2020.07.22
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コメント
7月31日130
では添削いたします(^^)
>東京大学2008年第3問
>設問A
>⑴a-アメリカ合衆国b-イギリスc-タイ
人口移動については「1人当たりGNIの高い国へと移動」が大原則ですね。aがアメリカ合衆国であるのは間違い無いとして、bはイギリスなのです。
確かにタイについては日本企業の海外現地法人(日系企業)数については「中国>アメリカ合衆国>タイ」の順であるように、経済的なつながりは強いのですが、人口移動については別の要因も作用します。留学を考えれば、1人当たりGNIの高い先進国における日本人の長期滞在者が多いのも納得ですよね(特にイギリスなど英語圏は語学留学生が多いはずです)。
残ったcがタイになります。
>⑵オーストラリア東海岸の温暖な気候である上に、観光資源に恵まれて諸外国の人が多く、異文化の人が住みやすい街であるから。
いいですね、都市を(シドニーやメルボルンでなく)ゴールドコースとやブリズベンに限定している点が重要であり、「東岸」「温暖」は非常に適切なキーワードです。とてもいいと思います。
ただ、「観光資源」についてはちょっと思い当たるところがないような。拡大解釈して、やや位置はズレますが、グレートバリアリーフがそれに該当するのでしょうか。決して誤りではありませんが、加点ポイントとはならないような気がします。
それならば「海岸リゾート」「リゾート地」のように答えた方がベターだったかなとは思いますよ。
ラストの「諸外国の人が多く、異文化の人が住みやすい街であるから」という点は非常にオリジナリティがあっておもしろいと思います。「多文化主義であり、英語も使えて、外国人にとって生活しやすい」ということですね。
ちなみに同じ州のケアンズは空路による日本への直行便があり、かなりアクセスがよくなっています。ただ、両都市からは距離がありますが。海外移住の場合は、実は日本とのアクセスも非常に重要な要因になったりするわけです。
ちょっと書き換えてみましょう。
温暖な気候でリゾート地に近く、日本へのアクセスも比較的いい。治安が良く、生活環境に恵まれている。(48字)
字数が短くなってしまいましたが、この程度にまとめればいいと思います。発展的な内容ですが、実はこの地域、日本からはリタイアした高齢者の移住も多いのですよ。そのことを含めて書いても良かったかもしれません。
それをふまえるとこのような文章になります。
温暖な気候でリゾート地に近く、日本へのアクセスも比較的いい。定年後の高齢者を中心に移住者が多い。(48字)
後半部分を書き換えてみました。
>設問B
>日本の製造業の国際競争力低下によって、低賃金労働に充てられる未熟練労働者が不足し、国内では対応できず、出入国管理法を改正し、かつてブラジルに渡った日系移民の子孫を受け入れたため。
正しい内容です。ただ、90字という長い文字数制限でありながら、一つの文で言い切ろうとしているため、形式的にわかりにくい文章となっている印象です。一つ一つの文を短く区切ってください。
例えばこのようになります。
日本の製造業の国際競争力低下によって、低賃金労働に充てられる未熟練労働者が不足した。国内では対応できず、出入国管理法が改正。かつてブラジルに渡った日系移民の子孫を受け入れた。
このように短い文を「羅列」した方がかえってわかりやすくなってりしませんか?接続表現を使って無理やり長文にするよりいいと思いますよ。地理の論述問題では「国語力」は問われません。むしろ国語力がある人ほど、文章表現に凝ってしまい、解答として内容に乏しいものになってしまう場合があります。出題者が問うているのは、貴方の国語力ではなく、地理力なのです。
ではさらに文章を工夫してみましょうか。
>日本の製造業の国際競争力低下によって、
この部分、適切ですね。労働コストの上昇によって製品価格が上昇することを「国際競争力が低下する」と言います。便利な言い回しなので覚えておくといいですね。
>低賃金労働に充てられる未熟練労働者が不足した。
なるほど、言っていることはわかるのですが、あまりいい表現とは思いません。例えば、上の部分と合わせて、「労働力不足の解消、安価な労働力の利用で国際競争力を高める」としてみてはどうでしょう。
その1.国際労競争力が下がった→その2.低賃金労働力の利用→その3.国際競争力を上げる
こうした流れがあるわけですよね。その1からその2の流れを述べるのではなく、その2からその3の流れのみを説明するという形の方が字数も節約できますし。シンプルだと思います。
>国内では対応できず、出入国管理法が改正。
法律の改正に触れている点は満点です。素晴らしいと思います。
>かつてブラジルに渡った日系移民の子孫を受け入れた。
今回の問題の要点はここですね。この部分をしっかり強調することが本問の趣旨だったと思います。
ただ、私は「日系移民」という言葉にちょっと疑問を感じるわけです。問題集の解説ではこの言葉が使われていますが、どうなんでしょう。
こういった国際的な人口移動に関する話題の場合、「日本人」は日本の国籍を有する人のことで、「日系人」は外国人です。親が日本人でありながら、ブラジルの地で生まれたら、彼らは日系ブラジル人となります。
つまり「日系移民」と言ってしまうと、これは外国人のことを指す言葉になってしまいます。これ、おかしいですよね。日本人がブラジルに移民し、そこで日本人として暮らしています。統計をみてわかるようにブラジルには日本人の永住者が多くなっています。彼らは移民先でも国籍は日本なのです。「日本からの移民」などように表現するべきでしょう。
1990年代に日本に出稼ぎにやってきた人々はもちろん「日系人」ですから日本人ではありません。ブラジルで生まれ、ブラジル国籍を有しています(さらに言えば、ポルトガル語を使用し、日本語はわかりません)。
日本からの移民(1世)である日本人と、その子孫である日系人(2世、3世)は区別しておいた方が適切であると私は考えているのです。
ですので「日系移民の子孫」という言い方は、個人的には不適切と思っています。「日本からの移民の子孫」が正確な言い方です。言葉の定義は一つ一つ厳密にしていきましょう。
というわけで私もちょっと書いてみました。以下のような感じです。
労働力不足の解消、安価な労働力の利用で国際競争力を高めるため、日系人に限り未熟練労働力の受入が法的に可能になった。日本からの移民が多く日系人の人口が大きいブラジルからの流入が急増。(90字)
法律の名称(出入国管理法)という言葉を使ってみたかったのですが、うまくいきませんでした。ちょっと残念なところです。
ただ、この書き方でわかるように、受け入れ対象の日系人はもちろんブラジル人に限定されるわけではありません。たとえば同時期にペルー人の流入も急増しています。ただ、そもそもの日系人人口が多いブラジルだからこそ、ブラジル人の数がとくに多くなっているわけですね。短い字数でここまで表現することは困難ではあるのですが、できる範囲で工夫してみてくださいね。
>設問C
>⑴世界の金融を司るこの4都市に進出していた金融系の企業が日本の金融危機によって業務改善や撤退の必要に迫られたため。
なるほど、自分の言葉を使って巧みに説明しようとしている意識が感じられます。とてもいいと思いますよ。
それを踏まえて一つ一つ見ていきましょう。
>世界の金融を司るこの4都市
さすがに「司る」は大げさな気もします(もちろん不適切ではありませんが)。金融の中心であることは明確ですので、そのことには触れず、単に「銀行など金融業を中心に日本の企業が海外に多く進出していたが」ぐらいの書き方でいいと思いますよ。
>日本の金融危機によって
これが解釈が難しいのですね。一般に金融危機といえば、1997年のアジア金融危機、2007年のリーマンショックが挙げられますが、本問の時期とはズレています。「日本」に限定するならば「バブル崩壊」は含めてもいいと思います。ただ、こちらも厳密には時期がズレているのですが。「バブル崩壊から継続する金融危機」といった感じでしょうか。
というわけで、私も書いてみました。
バブル期に銀行など金融業が多く進出していたが、バブル崩壊や金融危機によって一部が撤退した。(45字)
内容的にかなり曖昧になってしまったことは否めません。ただ先程も申したように、「金融危機」に具体性がなく、あくまで一般論として「金融危機→金融業の撤退」という図式に押し込めてしまうしか方法がなかったように思います。この程度の書き方で良かったと思いますよ。ご参考にされてください。
>⑵都市開発が進み、人口が多くある程度の市場が期待できる上海に日本企業が貿易の中枢管理機能を移転させていったため。
これは上手いですね。満点解答だと思いますよ。「都市開発」こそキーワードになりますよね。素晴らしいです。また「中枢管理機能」という言葉の使い方にも感心しました。日本企業が管理中枢部門をシャンハイに移転させたということですね。非常に納得できます。
私ならば、「工場」も付け加えたと思います。シャンハイの浦東地区は輸出加工区として多くの工場も進出しています。シャンハイは世界最大の商業都市であると同時に世界最大の工業都市でもあります。工場に関するトピックも付け加えても良かったでしょう。
以下が私の解答例です。
都市開発が進み人口も多い上海は広い後背地を有し経済力も大きい。日本から企業進出が急増し、工場も多く設けられた。(55字)
残念ながら「中枢管理機能」は含めることができませんでした。これはなかなか難易度が高い言葉だったと思いますよ。
さらに質問にも答えておきますね。
>Cの指定語句の後背地が気になりました、おそらく上海付近は後背地であると推理しましたが、答案には盛り込まず逃げました…。
いえ、これは全く構わないと思います。無理に語句を使って誤った内容になるより、それを避けることが賢明な場合はあります。
ただ、上の解答例からもわかるように、私は「後背地」という言葉を使っています。後背地については「広い」「狭い」といった形容詞と一緒に用いてください。「シャンハイ付近は後背地である」という言い方ではなく、「シャンハイは広い後背地を有する」といった感じです。
後背地は経済用語なのです。生産力、市場と考えてください。
例えば、こういったパターンです。
「アルゼンチンのブエノスアイレスは広い後背地を有する。」
これは、港湾都市であるブエノスアイレスの背後には広大な農業用地が広がっているという意味です。農産物の輸出港として発展したブエノスアイレス。この都市の内陸側にはパンパという草原がみられ、農畜産物の生産が盛んに行われています。ブエノスアイレスが発展した要因としては、豊かな農畜産物の生産があるわけで、この生産力は「広い後背地」によって支えられているのです。
後背地はこのように生産力について言う場合が多いのですが、市場について言うこともあります。
「東京は大きな後背地を有し、商業活動が活発である。」
こんな感じでしょうか。東京とその周辺(東京大都市圏というべきでしょうか)は莫大な人口を抱え、消費活動が活発です。「市場(マーケット)」としての規模が極めて大きいことがわかります。この市場こそ、東京の後背地となります。巨大な市場に向けて、生産活動や商業活動が行われています。大きな後背地を有しているからこそ、東京は世界最大規模の経済都市となるのですね。
シャンハイの場合の「後背地」は、ブエノスアイレスパターンではなく、東京パターンでしょうね。周辺地域の人口が大きく、消費活動や購買活動が活発です。そうした巨大マーケットの玄関口としてシャンハイが機能しており、世界中から多くの企業が集まっているのです。
>たまたま選んだのですが、異様に難しく感じてしまう大問でした。
とてもいいですね。問題選びも勉強の一部ですが、難問と思える問題に果敢にチャレンジすることこそ大きなステップアップにつながりますよね。
>(夏期の期間に入り、地理に割ける時間がかなり増えます。今まで満足にできなかった分、東大の過去問を頻度を上げて解いて添削フォームに投稿しようと思います、今後ともよろしくお願いします。)
こちらこそよろしくおねがいします。充実の夏にしましょう!
- 2020.08.06 11:15
- たつじん
東京大学2008年第3問
設問A
⑴a-アメリカ合衆国b-イギリスc-タイ
⑵オーストラリア東海岸の温暖な気候である上に、観光資源に恵まれて諸外国の人が多く、異文化の人が住みやすい街であるから。
設問B
日本の製造業の国際競争力低下によって、低賃金労働に充てられる未熟練労働者が不足し、国内では対応できず、出入国管理法を改正し、かつてブラジルに渡った日系移民の子孫を受け入れたため。
設問C
⑴世界の金融を司るこの4都市に進出していた金融系の企業が日本の金融危機によって業務改善や撤退の必要に迫られたため。
⑵都市開発が進み、人口が多くある程度の市場が期待できる上海に日本企業が貿易の中枢管理機能を移転させていったため。
Cの指定語句の後背地が気になりました、おそらく上海付近は後背地であると推理しましたが、答案には盛り込まず逃げました…。
たまたま選んだのですが、異様に難しく感じてしまう大問でした。
(夏期の期間に入り、地理に割ける時間がかなり増えます。今まで満足にできなかった分、東大の過去問を頻度を上げて解いて添削フォームに投稿しようと思います、今後ともよろしくお願いします。)
- 2020.07.31 23:48
- mk
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