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2020.11.27
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コメント
では添削いたします。今回も300字制限という分量を上手く満たしています。とても素晴らしいと思いますよ。長文を書く技術は十分に習得しているようですね。
>2018 筑波大 地球学類 Ⅲ
まずは全体から
>インドネシアは、3カ国中で最も経済規模が小さいため、10万人当たりの生産、販売台数ともに最小である。しかし、近年は経済成長により、どちらの値も上昇傾向にある。タイは、2000年頃からの経済成長によって、日本などの自動車生産国が、安価で豊富な労働力を求めて工場を設置したことで、10万人当たりの生産台数が特に増加し、2010年からは最大となっている。また、生産台数に比例して、販売台数も増加している。マレーシアは、早くに経済発展を遂げたため、図中での常に10万人当たりの生産、販売台数はともに高くなっている。近年は、10万人あたりの販売台数の方が高く、輸入志向となっている。
300字という字数制限は短いものではなく、それなりの工夫が必要ではありますが、ここでは「インドネシア」、「マレーシア」、「タイ」の3つの国を個別に取り上げることで整理された構成となっています。とても好ましいと思いますよ。
内容もグラフの読み取りを中心としたものであり、極めて正確です。とくにマレーシアについて販売台数が生産台数を超え、輸入が増えている点に注目した点は鋭いと思います。大変感心しました。グラフ読解において満点解答です。
では部分ごとに見ていきますね。
>インドネシアは、3カ国中で最も経済規模が小さいため、
これは誤解ですね。インドネシアは「経済規模」は大きいですよ。3カ国中、最も大きい経済規模を有しています。
経済規模=GNI
経済レベル=1人当たりGNI
インドネシアは1人当たりGNIは低いですが、人口は大きいですよね。GNI=1人当たりGNI✕人口 ですので、東南アジアで最もGNIすなわち経済規模が大きな国となります。
このような重要ワードを間違えてはいけません。少なくとも「経済規模」を「経済レベル」あるいは「経済水準」と置き換えるべきでした。
>10万人当たりの生産、販売台数ともに最小である。
ここはグラフが正確に読めていますね。適切です。「最小」という表現も問題ないと思います。「最少」や「最低」にする必要はないでしょう。
>しかし、近年は経済成長により、どちらの値も上昇傾向にある。
「上昇傾向」という言い方もいいですね。「10万人当たり」という割合であるので、あまり「増加」という言葉は使いたくないところです。また大きな上昇幅ではないので、「傾向」という言葉で曖昧に濁している点も適切に思います。良い書き方ですね。
>タイは、2000年頃からの経済成長によって、
2000年という具体的な年次を示しているのは良いと思いますよ。
>日本などの自動車生産国が、
ここも具体的な国名が示されている点が適切です。
>安価で豊富な労働力を求めて工場を設置したことで、
「安価で豊富な労働力」という言い回しはよく使われるものですね。この言い方、ぜひ覚えておきましょう。「工場を設置」も問題ありません。「製造拠点」や「進出」などいろいろな言い方が考えられる箇所ではあります。
>10万人当たりの生産台数が特に増加し、2010年からは最大となっている。
「特に増加し」ならば「急増」でいいと思いますし、また単に「最大」ではわかりにくいので「3か国中最大」などもうちょっと具体的な書き方もできたとは思います。とはいえ、意味は十分に伝わっていますので、もちろん全く問題ありません。
>また、生産台数に比例して、販売台数も増加している。
これもいいですね。ただ、ここで「生産台数>販売台数」により深く注目できたはずです。国内で売る数より造っている数の方が多いわけですから、つまり「余る」わけですよね。これってどういうことでしょう?もちろん「輸出」ですよね。日本とタイの間では自動車部品において関税など貿易制限が撤廃され自由貿易が実現しています。日本の自動車メーカーにとっては非常に有利な条件となっているわけですよね。タイに製造拠点を設け(もちろん安価で豊富な労働力の利用がポイントですね)、西アジアの富裕国へと輸出する。こうした形をイメージできればさらに適切な解答になったとは思います。
マレーシアは、早くに経済発展を遂げたため、図中での常に10万人当たりの生産、販売台数はともに高くなっている。近年は、10万人あたりの販売台数の方が高く、輸入志向となっている。
「輸入志向」という用語はないので注意してください。「輸出指向」と曖昧になっているのでしょうか(それにしても漢字が違いますが)。輸出指向は「輸出指向型工業」という用い方をし、「輸入代替型工業」と対になります。発展途上国が工業化する場合、まず国内供給を満たすための工業製品(主に軽工業)の製造に力をいれ、これが輸入代替型工業です。やがて工業生産力が上がると、国内市場の規模を超えた製品製造が行われ、これらは輸出されることになります。これが「輸出指向型工業」ですね。重要なキーワードなので適切な使い方をしましょう。
ですので、ここは単に「輸入が増えている」のような書き方で良かったと思いますよ。
では以上のことをふまえ、全体を書き改めてみましょう。
インドネシアは経済レベルが低く工業化は未成熟である。近年は上昇傾向にあるものの、人口当たりの自動車生産台数は少なく販売台数もそれに準じている。マレーシアは早い段階で工業化が進んだ国であるが、自動車工業はこの国の主幹産業ではなく、とくに2000年以降は生産は停滞している。近年は輸入も増えている。タイは、アジア通貨危機やリーマンショックでの一時的な落ち込みはあるものの、とくに2000年代自動車生産台数は急増している。安価で豊富な労働力を目的として日本企業が自動車の組立工場を進出させたためであり、背景には日本との自由貿易協定がある。とくに近年は西アジア向けの輸出も増加している。(283字)
いかがでしょうか。グラフには「10万人当たり」ですので、単純に3カ国の生産台数を比較できませんので(もちろん、インドネシア2億人、タイ7千万人、マレーシア3千万人という人口を用いて計算すれば実際の生産台数は算出されるでしょうが)、「首位である」や「タイがマレーシアを逆転した」などの表現は避けています。インドネシア71字、マレーシア73字、タイ139字とバランスが悪いのが気になりますが、東南アジアで自動車工業に特色があるのはタイだけですので、とくに問題なかったかなとは思います。アジア通貨危機やリーマンショックなど付帯事項を加えており、これは字数稼ぎでもあるのですが、300字という長文を考えた場合、こういった「余計なこと」を付け加えるのもテクニックですね。
今回もとても良く書けていたと思います。とくに3カ国をそれぞれ述べていくという構成において卓越したものが感じられます。共通テスト対策が忙しい時期ですが、時間をみつけて少しずつでも筑波演習を続けていきましょう。
- 2020.12.08 14:06
- たつじん
2018 筑波大 地球学類 Ⅲ
インドネシアは、3カ国中で最も経済規模が小さいため、10万人当たりの生産、販売台数ともに最小である。しかし、近年は経済成長により、どちらの値も上昇傾向にある。タイは、2000年頃からの経済成長によって、日本などの自動車生産国が、安価で豊富な労働力を求めて工場を設置したことで、10万人当たりの生産台数が特に増加し、2010年からは最大となっている。また、生産台数に比例して、販売台数も増加している。マレーシアは、早くに経済発展を遂げたため、図中での常に10万人当たりの生産、販売台数はともに高くなっている。近年は、10万人あたりの販売台数の方が高く、輸入志向となっている。
- 2020.12.02 08:01
- KZM
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