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2021.06.30
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コメント
では添削いたします。
>東大 2020年
>第1問
>設問A
>(1) 低く緩やかなXに比べてYは標高が高く険しいが、中央構造線上のYは、内的営力による隆起量が外的営力による侵食量を上回るから。(61字)
いいですね。適切です。(こちらも字数制限内に収めてください)
ただ、これは「が」で文をつなぐ必要はあったでしょうか?最初の文で「XとYの地形の特徴の違い」を述べ、後半の文で「Yの成因」を述べているわけですよね。
チョウセイさんがこれから気をつけて欲しいのは「字数とのバランス」です。60字制限ならば「2つのトピック」です。理想をいえば「2つのトピック、2つの文」ですね。つまり30字制限の解答を二つ並べるわけです。東大論述はこういった組み立てが意識されて作問されています。
「Xは低く緩やかであり、Yは標高が高く険しい。Yは中央構造線に沿い、内的営力による隆起量が外的営力による侵食量を上回る。」(59字)
これで十分だと思いますよ。最初の文も「に比べて」は不要だと思いませんか。単にXとYの地形の違いだけを並べればいいだけです。あくまで「地理」の問題であり、「国語(現代文)」の問題ではありません。できるだけ文章力に依存しない形で解答することがコツなのです。
>(2) プレート境界上の火山フロントにあり、新しい山地であるため。(29字)
「火山」について言及できていれば合格圏だったと思います。ただ、一部に誤認識がありますね。Zは奥羽山脈と思われますが、ここには多くの火山が列をなしており、火山帯(火山フロント)となっています。
しかし、これが「プレート境界」と一致しているわけではありませんよね。プレート境界は海溝です。太平洋プレートが北アメリカプレート(東北地方)の下に潜り込むことで日本海溝が形成されていますよね。
こういった火山帯はプレート境界からみて、やや大陸プレート側にみられることが一般的で、奥羽山脈とその周辺地域がこれに該当します。
「プレート境界に近い(平行する)」などとすればより正確だったと思いますよ。
>(3) 第二次世界大戦後の食料不足により、農地の拡大を要したため。 (29字)
なるほど、本当にチョウセイさんは文章力がありますね。美しい文章を書きます。「要する」などなかなか高校生で使える言葉ではありません。
しかし、それがアダとなっているのですよ。すらすらと文章が書けてしまうため、慎重さが欠ける場合があります。他の問題でも散見されるのですが、本当に書くべき言葉を見失ってしまい、本来必要とされるその言葉を使うことなく、文章を綺麗な形に仕上げてしまうのです。
出題者が本問で受験生に問うているワードは何だったと思いますか?
bの場所、チョウセイさんならわかるはずですよ。そう、「八郎潟干拓地」ですよね。当時日本2位の面積を有していた巨大な湖のほぼ全面を干拓し、大規模な水田を開発しました。「干拓」はキーワードになったはずですよ。
問題文の中では「干拓」について説明しろとは一言も言われていませんが、ゆっくりと時間をかけて問題に取り組めば、この言葉を使う方が適切な解答になるのではないかという予想はできたはずです。
「戦後の食料難を背景とし大規模な干拓事業で広大な水田を開いた。」(30字)
こういうことですよね。また問題文にある言葉(「背景」)もそのまま使っています。文章力がない方がかえって適切な解答にたどり着くことは多々あります。先ほどのプレート境界にしてもそうですが、慎重に取り組めばさらに高得点が狙えるはずですよ。
>(4) 大規模な沖積平野の広がるcでは、稲作が広く行われるのに対し、火山灰質の台地が広がるdでは、畑作や酪農を大規模に行う。(58字)
悪くありませんが、どうなんでしょう?書くべき内容に比べ字数制限が緩く、自由に記述できる度合いが高い問題に思うんですよ。
「大規模」や「に対し」など、ちょっと工夫がない言葉で字数ばかりを費やし、もったいないと思うんですよね。私ならここは固有名詞を使ってしまいます。
「Cは石狩川沿いの沖積平野で低湿な地形で稲作。Dは広く台地である火山灰土壌の十勝平野。根菜を主とした畑作や酪農、畜産。」(58字)
どうでしょうか。キーワードをひたすら並べただけで文章力に依存していません。しかし、キーワードの使用によって加点されることもあり、そうした場合、こういった解答の方が高得点を稼ぎ出すことがあります。
限られた字数の中で、どれだけ有効な言葉を入れられるか。チョウセイさんは現時点でかなり高い能力を持っていますので、ここからは次の段階に進む時期です。それはこのような「キーワード」を発見し、それを使いこなす(詰め込む)テクニックを磨くことなのです。
>(5) 5×10(1) 倍
いいですね。問題ないかと思います。
>設問B
>(1) 両県とも中央構造線上にあり、山地が広くて海岸近くまで迫っていることから、可住地となる平野が少なく、林野となる山地が多い。(60字)
悪くはありませんが、「中央構造線」上とはちょっと言い切れないのでは?中央構造線(メディアンライン)は和歌山県では最北部の紀の川沿い、四国では徳島県の吉野川から愛媛県の佐多岬半島に伸びます。和歌山県主要部や高知県はこの南側すなわち「西南日本外帯」に位置しますね。北側の西南日本内帯は丹波高地や四国山地などなだらかな地形が多いのに対し、外帯は険しい褶曲山脈が連続します。
この「褶曲山地」というのも外帯の特徴の一つで、この一帯には火山がみられません。60字と比較的長い文字数制限(2つのトピック、2つの文が基本です)ですので、これについて触れてもいいかもしれません。
「共に中央構造線の南側の西南日本外帯に含まれ険しく標高の高い褶曲山脈が多い。火山はみられないが全体に山がちで平野が少ない。」(60字)
こういった形でしょうか。「海岸近くにまで迫っている」、「可住地となる平野」といった表現より、「褶曲山脈」や「火山がない」など直接的に得点になりそうなキーワードで文章を埋めています。
>(2) 水。人口密度の低い高知県は、夏の季節風や台風により降水が多いが、人口密度の高い香川県は、季節風が四国山地で遮られ年中少雨となるため、農工業に必要な水がダムや用水によって送られる。(89字)
悪くありませんが、一文で言い切ってしまおうとしているので、ちょっと噛み合わせのおかしい文章になってしまっていますよ。
「人口密度の低い高知県は、夏の季節風や台風により降水が多いが」とありますが、高知県の人口密度の低さと降水量の多さは関係ないですよね?
「高知県は夏の季節風や台風により降水が多いが、人口密度が低く需要が少ない」
こういうことが言いたいのだと思います。いかがでしょう?「人口密度」ではなく「人口」としていますが、こちらの方がスムーズでしょう。
「香川県は瀬戸内に位置し降水量が少ない。人口密度が高く稲作や工業も発達し、生活や農業、工業用水が不足する。」
香川県についてはこういうことですよね。讃岐平野では稲作が盛んに行われ、瀬戸内沿岸では重工業もみられます。
ただし、これらは「消費」についての内容です。本問では「供給」についても述べる必要があります。これについては香川用水を考えればいいですね。吉野川にダムを建設し、山脈を超えるトンネルによって香川県側へと水が運ばれています。
これだけの内容を90字に詰め込まないといけません。
例えば、季節風や台風など高知県で多雨となる理由はカットしてもいいでしょう。さらに香川県も単に「少雨」でいいかもしれません。
「多雨の高知県では人口密度が低く水が余り、少雨の香川県では人口密度が高く、さらに稲作や重工業も発達するため水が足りない。ダムを建設し用水によって香川県側へと水が運ばれる。」(84字)
吉野川や早明浦ダム、香川用水など固有名詞を加えることもできたかも知れません。ただ「消費=香川では生活用水や農業用水、工業用水が必要」、「供給=ダムから用水によって水を供給」、「やりとりが生じる理由=高知県で水が余り、香川県で水が足りない」という設問が求める要素を全て詰め込んでいます。
>(3) 高原で冷涼な長野県は、抑制栽培を行って端境期の夏に出荷するが、低平で都市近郊の茨城県は、低輸送費で旬の春秋に出荷する。(59字)
いいですね。「輸送費」に目をつけた点は素晴らしいと思います。「低平」は不要だったかと思いますが、長野県が「高原」であることと対比したのでしょうか。悪くありません。
唯一気になるのは「都市近郊」ですね。これは「(東京)大都市圏」とするか「大消費地」とするべきだったでしょう。「都市」は日本各地にありますし、それこそ長野市も都市の一つです。言いたいことはとてもよくわかるので、もったいない気がします。
全体としてとてもよく書けています。ただ、今回の大問には内容に比べ字数制限に余裕がある問題が多く、これらをどう処理していくかが課題だったと思います。「石狩平野」や「干拓」など「隠されたキーワード」を自分なりに見つけ、それで字数を埋める工夫も今後は必要かと思います。
さらに素晴らしい解答を期待していますよ。
- 2021.08.04 16:06
- たつじん
東大 2020年
第1問
設問A
(1) 低く緩やかなXに比べてYは標高が高く険しいが、中央構造線上のYは、内的営力による隆起量が外的営力による侵食量を上回るから。(61字)
(2) プレート境界上の火山フロントにあり、新しい山地であるため。(29字)
(3) 第二次世界大戦後の食料不足により、農地の拡大を要したため。 (29字)
(4) 大規模な沖積平野の広がるcでは、稲作が広く行われるのに対し、火山灰質の台地が広がるdでは、畑作や酪農を大規模に行う。(58字)
(5) 5×101 倍
設問B
(1) 両県とも中央構造線上にあり、山地が広くて海岸近くまで迫っていることから、可住地となる平野が少なく、林野となる山地が多い。(60字)
(2) 水。人口密度の低い高知県は、夏の季節風や台風により降水が多いが、人口密度の高い香川県は、季節風が四国山地で遮られ年中少雨となるため、農工業に必要な水がダムや用水によって送られる。(89字)
(3) 高原で冷涼な長野県は、抑制栽培を行って端境期の夏に出荷するが、低平で都市近郊の茨城県は、低輸送費で旬の春秋に出荷する。(59字)
- 2021.07.29 11:28
- チョウセイ
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