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では添削いたします。

＞東京大学　2008年度
＞第３問
＞設問A
＞(1)a−アメリカ合衆国　b−イギリス　c−タイ

人口移動については「１人当たりGNIの高い国へと移動」が大原則ですね。ａがアメリカ合衆国であるのは間違い無いとして、ｂはイギリスなのです。

確かにタイについては日本企業の海外現地法人（日系企業）数については「中国＞アメリカ合衆国＞タイ」の順であるように、経済的なつながりは強いのですが、人口移動については別の要因も作用します。留学を考えれば、１人当たりGNIの高い先進国における日本人の長期滞在者が多いのも納得ですよね（特にイギリスなど英語圏は語学留学生が多いはずです）。

残ったｃがタイになります。

＞(2)世界の経済水準が上がり、観光で訪れて移住を決める人が増えたから。空調技術が進歩、暑さを和らげた生活が可能となったから。（59字）

どうなんでしょう？ちょっとこれでは答えになっていないのでは？再考してみてください。

例えば私はこのように書いています。

「温暖な気候でリゾート地に近く、日本へのアクセスも比較的いいから。また治安が良く、生活環境に恵まれているから。」（５６字）

都市を（シドニーやメルボルンでなく）ゴールドコースとやブリズベンに限定している点が重要です。地図で確認してもらえればわかると思いますが、いずれの都市もオーストラリア北西部のクインズランド州に位置しています。「温暖」な気候がみられ、海岸リゾートとなっています。

また同じ州のケアンズは空路による日本への直行便があり、かなりアクセスがよくなっています。ただ、両都市からは距離がありますが。海外移住の場合は、実は日本とのアクセスも非常に重要な要因になったりするわけです。

さらに、実はこの地域、日本からはリタイアした高齢者の移住も多いのですよ。そのことを含めて書いても良かったかもしれません。

それをふまえるとこのような文章になります。

「温暖な気候でリゾート地に近く、日本へのアクセスも比較的いいため。定年後の高齢者を中心に移住者が多くなっている。」（55字）

こういう書き方もあったかと思います。参考にしてくださいね。

＞設問B
＞労働集約的産業で国際競争力を得るには、未熟練労働力を用いて人件費を安くし価格を抑えたい。そこで、日本にもともと縁があり帰ることを望む日系移民のブラジル人子孫の受け入れを促進したから。（89字）


おもしろいですね。二つの文から構成されていますが、両者が並立しているわけではなく、最初の文の内容を後半の文で受けて、一つの説明文となっています。論述問題としては珍しい組み立てに思いますが、自分の考えている内容を正確に伝えようという意思が感じられ、好印象ですよ。

ただ、一部に事実誤認があります。

「帰る」とはどういうことでしょうか？ブラジルに渡った日本人の移民（一世）は日本の国籍を持ちながらもブラジルに永住し、そこに生活基盤を置いているはずです。彼らの子供や孫たち（二世、三世ですね）はブラジルで生まれブラジル国籍を有しています。完全は「ブラジル人」です。彼らにとって日本は「帰る」場所ではないでしょう？

そもそも「日経移民」という言葉が不正確です。上述のように移民は日本の国籍を有していますから「日本人移民」とするべきです。

そして二世は三世はブラジル人ですが、日本人の血を引いているので「日系ブラジル人」となります。

この区別はきちんとしてくださいね。

例えば、バラク・オバマはケニア系アメリカ人ですし、ダルビッシュはイラン系日本人です。「〜系」の使い方を不正確にしてはいけません。

後半部分については「そこで、法律を改正し日系人ブラジル人の単純労働者としての受け入れを促進したから。」としたらベターだったでしょう。

「縁がある」という言い方も曖昧な印象があり、あまり良くないと思いますよ。地理は「理系」科目なので、「縁」という情緒的な言葉は避けるべきでしょう。

参考までに私もちょっと書いてみました。以下のような感じです。

「労働力不足の解消、安価な労働力の利用で国際競争力を高めるため、日系人に限り未熟練労働力の受入が法的に可能になった。日本からの移民が多く日系人の人口が大きいブラジルからの流入が急増。（90字）」

法律の名称（出入国管理法）という言葉を使ってみたかったのですが、うまくいきませんでした。ちょっと残念なところです。

日系人はブラジルに限らず世界中にいるわけですが、とくにブラジルにその数が多いため、結果としてブラジル人の入国が増えたことにまで言及しています。ただ、実際にはそこまで述べる必要はありませんし、ゆうさんの解答のように「日系ブラジル人の受け入れ」という言い方で十分かと思いますよ。

＞設問C
＞(1)金融に関して世界の中枢管理機能を持った都市に日本も銀行を進出させたが、金融危機で撤退させたから。（48字）

なるほど、これはわかりやすいですね。自分の言葉で丁寧に伝えようという意思が見えます。とてもいいと思いますよ。

＞(2)上海は中国最大の商工業都市であり、都市開発も進むため、増えた人口を用いて工場を運用しようと日本企業が進出したから。（58字）

どうなんでしょうね？一つ一つ分析しましょう。

＞上海は中国最大の商工業都市であり、

これは正確です。適切な書き出しです。

＞都市開発も進むため、

まぁこれも間違ってはいませんね。適切です。

＞増えた人口を用いて工場を運用しようと日本企業が進出したから。


この部分がちょっと疑問なのですよね。無理やり人口と結びつけることもなかったのでは。上海が人口のみでなく経済的にも規模の大きな都市であることを強調し、それに付随して日本企業の進出を関連づければ良かったのではないかと思います。

以下が私の解答例です。

「都市開発が進み人口も多い上海は広い後背地を有し経済力も大きい。日本から企業進出が急増し、工場も多く設けられた。」（55字）

私は「後背地」という言葉を使っています。後背地については「広い」「狭い」といった形容詞と一緒に用いてください。「シャンハイ付近は後背地である」という言い方ではなく、「シャンハイは広い後背地を有する」といった感じです。

後背地は経済用語なのです。生産力、市場と考えてください。

例えば、こういったパターンです。

「アルゼンチンのブエノスアイレスは広い後背地を有する。」

これは、港湾都市であるブエノスアイレスの背後には広大な農業用地が広がっているという意味です。農産物の輸出港として発展したブエノスアイレス。この都市の内陸側にはパンパという草原がみられ、農畜産物の生産が盛んに行われています。ブエノスアイレスが発展した要因としては、豊かな農畜産物の生産があるわけで、この生産力は「広い後背地」によって支えられているのです。

後背地はこのように生産力について言う場合が多いのですが、市場について言うこともあります。

「東京は大きな後背地を有し、商業活動が活発である。」

こんな感じでしょうか。東京とその周辺（東京大都市圏というべきでしょうか）は莫大な人口を抱え、消費活動が活発です。「市場（マーケット）」としての規模が極めて大きいことがわかります。この市場こそ、東京の後背地となります。巨大な市場に向けて、生産活動や商業活動が行われています。大きな後背地を有しているからこそ、東京は世界最大規模の経済都市となるのですね。

シャンハイの場合の「後背地」は、ブエノスアイレスパターンではなく、東京パターンでしょうね。周辺地域の人口が大きく、消費活動や購買活動が活発です。そうした巨大マーケットの玄関口としてシャンハイが機能しており、世界中から多くの企業が集まっているのです。


全体的に自分なりの言葉の使い方ができており、好印象ですよ。難しいことを述べる必要はありません。知識は現段階で十分です。さらにいろいろな問題を解いてみて、文章表現力を磨いてくださいね。

東京大学　2008年度
第３問
設問A
(1)a−アメリカ合衆国　b−イギリス　c−タイ
(2)世界の経済水準が上がり、観光で訪れて移住を決める人が増えたから。空調技術が進歩、暑さを和らげた生活が可能となったから。（59字）

設問B
労働集約的産業で国際競争力を得るには、未熟練労働力を用いて人件費を安くし価格を抑えたい。そこで、日本にもともと縁があり帰ることを望む日系移民のブラジル人子孫の受け入れを促進したから。（89字）

設問C
(1)金融に関して世界の中枢管理機能を持った都市に日本も銀行を進出させたが、金融危機で撤退させたから。（48字）
(2)上海は中国最大の商工業都市であり、都市開発も進むため、増えた人口を用いて工場を運用しようと日本企業が進出したから。（58字）


よろしくお願いいたします。