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2020.08.21

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>東大地理 2010年度第1問

>(1)乾燥帯にあるカリバダムは灌漑用水の安定的な確保のため、亜寒帯にあるクラスノヤルスクダムは雪解水を少しずつ流すため。

いいですね。的確です。本問の難しいのは「気候」に関連づけることだと思います。本来なら、カリバダムもクラスノヤルスクダムも発電用のダムであり、前者は銅の、後者はアルミニウムのそれぞれ精錬に電力が使われているので、それを記述するべきなのですが、本問ではそうはなっていないようです。

カリバダムが位置するザンビアの主な気候区はC wです。カリバダムはもしかしてBS気候区にあるのかも知れませんが、私にはよくわかりません。ただ、いずれにせよ雨季と乾季は明瞭であり、気候帯や気候区について言及するより「乾季がある」ことを強調すれば十分に思いました。

クラスノヤルスクダムの周囲は冷帯気候であり、冬季に凍結します。そして春先には融雪により周囲に洪水の被害が及ぶかも知れません。こちらについては確実ですね。

雨季と乾季の明瞭な地域のカリバダムは、渇水期の用水確保。寒冷地域のクラスノヤルスクダムは、初夏の融氷期の増水への備え。(59字)

このような解答例をつくってみました。「春」でも「初夏」でもどちらでもいいと思います。月で考えると5月ぐらいなので初夏なのですが、シベリア地域の実際の気候を考えれば「春」というべきですからね。

さらに「天水の貯水」でも十分なのですが、ここでは「渇水期の用水確保」としています。意味的にはいずれも同じでしょう。

K.Kさんの解答では「雪解け水を少しずつ流すため」という部分が印象的です。とてもわかりやすいと思いますよ。治水効果(洪水を防ぐ)が述べられていますね。

>(2)中部・四国地方の河川は急流を下るため勾配が急で降水量も流量も多いが、中国地方は対照的になだらかで少雨だから。

とてもわかりやすいですね。ただし、「急流を下るため」に「勾配が急」というのはおかしいですね。「勾配が急」だから「急流」になるのです。さらに「急流を下るため勾配が急で」「降水量も流量も多い」というつながりも意味がつながっていません。この部分は言葉を入れ替えてみましょう。

中部・四国地方は降水量が多く流量も多く、急斜面が多く勾配も急だが、中国地方は少雨でなだらかで河川勾配や緩やかだから。(58字)

こういった感じでしょうか。短い文字数制限で書きにくいとは思いますが、論理的破綻だけはしないように。

中部・四国地方は地形が険しく河川勾配が急。多雨で流量も多い。中国地方はなだらかで流れも緩やか。少雨で流量も少ない。(57字)

論理的に破綻しないようにするには、このように短文をひたすら積み重ねるというテクニックも有用ですよ。接続詞を用いるなどして長文で言い切ろうとするから文章の粗(あら)が目立つのです。開き直って「上手い文章を書く」という気持ちを捨ててしまえばいいのです。地理で国語力が問われませんよ。

>(3)ダムの貯水量が減少するため使用可能な水資源が減少し、ダムより上流部では洪水が起こりやすくなる。また、ダムの下流部では土砂の運搬量が減少することから海岸線が後退する。

いいですね。とてもわかりやすいです。これぐらいの文字数がある方が余裕をもって文章を組み立てることができるのでないですか。わかりやすい好感の持てる文章です。

以下が私の解答例です。「灌漑」も加えています。

ダムに土砂が堆積することで貯水量が減少する。治水効果が下がり洪水が頻発する。水資源の減少で灌漑や発電の能力が下がる。下流側へ流出する土砂が減少することから、海岸侵食が生じる。

どうでしょうか。3つのブロックに分け、「土砂の堆積→洪水の発生」「水資源の減少→灌漑や発電が困難に」「土砂の流出の減少→海岸侵食」をそれぞれ説明しています。

K.Kさんの文章は2つめのブロックの「灌漑や発電」が欠けています。言うまでもなく、これはダムの主目的ですよね。これについて言及すればさらに素晴らしい解答になったでしょう。

>(4)C。森林は保水力が高く、水分を蓄え、少しずつ流すが、このはたらきは人工的につくられたダムのようだから。

なるほど、悪くありません。とてもわかりやすい文章になっています。ただ、字数がちょっと短いような気がしますね。

ダムには「治水(洪水を防ぐ)」と「利水(用水の確保)」の2点の目的があります。これらをそれぞれ記述することでかなり字数が稼げたと思いますよ。

私もちょっと書いてみました。

森林地域の土壌はよく雨水を浸透させ地下水が涵養される。雨水は少しずつ流れ出し、河川の流量変化は穏やかなものとなる。洪水を防ぐ治水効果があることから緑のダムと呼ばれる。

「地下水の涵養(かんよう)」という言葉は便利なのでぜひ使ってみてください。また、本問は字数に余裕があるのでラストに「〜ことから緑のダムとよばれる」と余分な部分も付け加えています。いずれにせよ、かなり字数に余裕がある問題でしたね。

>(5)積雪や氷河は春から夏に少しずつ融けて川などに流れるが、この時期は灌漑用水や生活用水として水の需要が高まる時期だから。

こちらも字数的に物足りない気がしますね。どうも( )さんは、字数制限が長くとも短くとも「一文」で言い切ろうとしていませんか?

例えば私ならば、字数制限が短ければ、単語を積み重ねます。文章とすることはあまり考えず、要点のみを箇条書きで並べる感じです。

一方、長文の場合は、複数の文によって記述しようと考えます。二つの対照的な内容を並べる場合もありますし、「起」「承」のように、文章を関連させつつ繋げるパターンもあります。本問も、とりあえず複数の文で組み立てる感じで構成してみてはどうでしょう。

冬の間に積雪や氷河として標高の高い山岳部に蓄えられた水は、春先に融け出し、周辺地域へと流出する。田植えの時期など水需要の多い季節や夏の渇水期などに農業・生活用水として利用される。

上が私の解答例です。長い字数を利用して、詳しく説明してみました。

「田植えの時期」はアジア限定の内容ですし、「夏の渇水期」はアルプス南麓の南ヨーロッパです。このように具体的な状況を想定して書くことも、「字数が長い」場合には有効な手段ですので、参考にしてください。

では次回も期待しています(^^)

  • 2020.08.27 02:25
  • たつじん

東大地理 2010年度第1問

(1)乾燥帯にあるカリバダムは灌漑用水の安定的な確保のため、亜寒帯にあるクラスノヤルスクダムは雪解水を少しずつ流すため。
(2)中部・四国地方の河川は急流を下るため勾配が急で降水量も流量も多いが、中国地方は対照的になだらかで少雨だから。
(3)ダムの貯水量が減少するため使用可能な水資源が減少し、ダムより上流部では洪水が起こりやすくなる。また、ダムの下流部では土砂の運搬量が減少することから海岸線が後退する。
(4)C。森林は保水力が高く、水分を蓄え、少しずつ流すが、このはたらきは人工的につくられたダムのようだから。
(5)積雪や氷河は春から夏に少しずつ融けて川などに流れるが、この時期は灌漑用水や生活用水として水の需要が高まる時期だから。

いつもありがとうございます、今回もよろしくお願いします。

  • 2020.08.23 17:40
  • K.K

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