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2022.01.27
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コメント
では添削いたします。
>東大2010年度第3問
>設問A
>(1) 高度経済成長期には臨海部に素材型工業が立地し、重量物の輸送に適した内航海運の割合が上昇。石油危機以降は自動車など機械工業が発達し、ジャストインタイム方式に適した自動車の割合が増加。
前半はうまく書けているのですが、後半が弱いですね。
・自動車工業が「内陸部」だからこそ自動車輸送が増えたことを指摘するべきです。「臨海部=船舶、内陸部=自動車」の対比は必要です。
・「ジャストインタイム」の使い方はとてもいいと思いますよ。
Wikipediaでは「生産過程において、各工程に必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給する」システムだと説明されていますね。在庫を減らして、無駄をなくす供給体制です。完成までに多くの工程と部品を必要とする自動車工業において一般的に行われ、トヨタがこれを導入することで生産性を上げていったことはよく知られています。ただ、大企業には有利なシステムではあるものの、関連工場にとっては負担が大きく、二次や三次の下受け企業にとっては過酷な生産体制を強いることになります。知識として知っておきましょう。「ジャストインタイム=即時」に部品を供給することです。
私はこう書いてみました。
「高度経済成長期は臨海立地の素材型工業が主で資源等大量輸送に適した内航海運が重用。石油危機以降は自動車工業など内陸部に工業地域が拡大しジャストインタイム方式に適した自動車輸送が発達」(90字)
いかがでしょうか。まず「臨海部」と「内陸部」の対比を示しています。それぞれ「素材型工業」と「自動車工業」を具体例として挙げています。
90字という字数は長く感じますが、実際に解答をつくってみるとかなり厳しいことがわかります。大きく2つのこと(高度経済成長期と現在)を説明する必要がありますから、実質的な字数制限は「45字」ですよね。さらに「ジャストインタイム」という言葉だけで全体の1割の字数を占めてしまうのです。内容的には難しいとは思いませんが、いかに整理して効率的に文章を作るのかが課題の問題でした。
>(2) 鉄道は一度に輸送できる量が多いがエネルギー消費量と二酸化炭素排出量が少ない。環境への負荷が少なく地球温暖化対策に繋がる。
文章を2つに区切っているのはいいのですが、それならば区切る場所が違うのではないですか。
・鉄道は一度に輸送できる量が多い
・エネルギー消費量と二酸化炭素排出量が少なく、環境への負荷が少なく地球温暖化対策に繋がる。
一つは輸送量の多さについて、一つは環境負荷の小ささについて、それぞれ述べるべきです。
「鉄道輸送は自動車輸送に比べ大気汚染物質の排出量が少なく環境負荷が小さい。エネルギー当たりの輸送量が大きく効率的である。」(59字)
いかがでしょう?字数と内容とのバランスを考慮して書いてみてくださいね。
>設問C
>(2) 三大工業地帯が連なる工業地帯である。雇用機会が多く、全国から人口が流入し都市化が進み、東海道メガロポリスを形成するため。
「東海道メガロポリス」という具体的な名称が使えている点がいいと思います。
ただ、「三大工業地帯が連なる工業地帯である」では「工業地帯」という言葉が連続していますよね。ちょっと工夫が必要です。「産業が発達している」などの表現はどうでしょう。
例えばこうなります。
「東京圏、名古屋圏、大阪圏は工業地域として発達し、人口が流入。大都市が連続する東海道メガロポリスが形成された。」(54字)
「工業地域として発達→人口が流入→メガロポリスを形成」といった流れを強調しています。このような三大都市圏の発達が、その周辺地域も含め「東海道」全体で発展する流れは、高度経済成長期を特徴づけるものです。
>(3) 連邦制をとるドイツは人口規模が特に大きい都市はなく各都市が独自に発展し、都市機能が分散する。中央集権化が進められた日本は首都の東京に都市機能が集中し人口規模が特に大きくなっている。
前半はいいのですが、後半はどうでしょう。日本について「中央集権化が進められた」と言い切ってしまっていいのでしょうか。「中央集権的な傾向の強い」などと表現をソフトにしてみてはどうでしょう。
ヨーロッパの歴史背景が重要で、かつてドイツ地域もイタリア地域も多くの小国が林立していました。ドイツならばプロイセンやザクセン、バイエルン、イタリアならばフィレンツェ、ベネチア、ナポリなど。これらが一体化して現在の「大国」になっているのであり、ドイツの連邦制はこれが根拠となっているのです。ただ、本問ではこのような歴史背景は述べる必要はありませんでしたが。
日本=中央集権的=一極集中=大都市(東京)
ドイツ=連邦制=分散=中小都市が並ぶ
こういったことをしっかり書き切れば十分です。
「連邦制のドイツは州ごとの独自性が強く、都市機能が諸都市に分散。各都市の規模もさほど大きくはない。日本は中央集権的な傾向が強く、東京が突出して巨大であり、世界都市としても重要。」(87字)
ドイツは「州」、日本は「世界都市」といった言葉も付け加えてみました。さらに都市の規模(ドイツは「規模は大きくなく」、日本の東京は「巨大」)にも言及しています。
「中央集権」については「中央集権的な傾向が強く」としています。例えば我々が普段生活していて「日本は中央集権国家だ」なんていう言い方、聞きますか?「中央集権国家」と断言するのではなく、「中央集権的な性格が強い」のように、ややソフィスティケートした言い方にとどめた方が無難だったかもしれません。
>2009年度第3問
>設問A
>(2) 高齢化が進み福祉や介護産業の需要が増加し雇用機会も増加する一方、公共事業の減少により土木工事の件数が減ったため。
いいですね。適切な解答です。
とてもいいですね。「公共事業」の縮小が原因であるとは目の付け所が素晴らしいです。
総合工事業の減少については、国の工業事業費の削減という側面があるのです。それまでの日本では、道路や施設など地方を対象とした公共事業が盛んに行われていました。これは「バラマキ」と批判されたこともありますが、地方へとお金を回すためには実は有効な経済対策でもあったのです。
そもそも「総合工事業」という言い方がわかりにくいですもんね。我々からすると、建設だけでなく、土木も含まれるのだなとピンとくるのですが高校生だとなかなか厳しいかも知れません。
同様に我々年代ですと、かつては公共事業によって地方の経済活性化が行われていたことを知っており、さらにそれらが地方への「ばら撒き」と揶揄されたり、「ハコモノ」と呼ばれた公共施設の利用者が少ないことを批判されたりなどの状況も見聞きしていますからね。
かつての自民党政権は「地方」の農村票が支持の基盤でした。ゆえに地方へとふんだんに予算を割き、それは公共事業費の拡大によって表されました。しかし21世紀の日本においては東京への一極集中が顕著になり、地方が顧みられることが少なくなりました。こういった背景が「総合工事業」の縮小につながっているような気もしますね。
>設問B
>大都市圏のA県に比べ、地方のB県は高齢化という年齢構成の変化により公共サービスの需要が増加。産業の未発達や生産年齢人口の割合の少なさにより財政基盤が弱い市区町村の合併が進んだため。
なるほど、整理されて述べられていますね。わかりやすいと思います。まずB県の状況を説明し、それから市町村合併が進んだ理由へと論が展開していますね。
私も書いてみました。
「地方圏のB圏の人口構成は高齢者に偏り、経済を支える若年労働者の割合が低く財政基盤が弱い。公共サービスの拡充と財政健全化を目指し、中心市による周辺町村の編入や市町村合併が進行した。」(89字)
私も書いてみました。「財政健全化」という言葉が難しいかもしれませんが、便利な言い回しでもあるので、ぜひ使ってみてください。「中心市による周辺町村の編入」とは要するに「市町村合併」のことなのですが、あえて分けて書いてみました。
それから個人的には「生産年齢人口」という言い方が好きではないので(高校生や大学生もこれに含まれることになりますね。また、65歳以上で働いているかたもたくさんいますので)この言葉は用いませんでした。ただ、だからといって「若年労働者」と言い切ってしまうのもどうかなとは思いますね。壮年や高齢者も含めたうまい言い方があればいいのですが。
- 2022.02.03 04:25
- たつじん
東大2010年度第3問
設問A
(1) 高度経済成長期には臨海部に素材型工業が立地し、重量物の輸送に適した内航海運の割合が上昇。石油危機以降は自動車など機械工業が発達し、ジャストインタイム方式に適した自動車の割合が増加。
(2) 鉄道は一度に輸送できる量が多いがエネルギー消費量と二酸化炭素排出量が少ない。環境への負荷が少なく地球温暖化対策に繋がる。
設問C
(2) 三大工業地帯が連なる工業地帯である。雇用機会が多く、全国から人口が流入し都市化が進み、東海道メガロポリスを形成するため。
(3) 連邦制をとるドイツは人口規模が特に大きい都市はなく各都市が独自に発展し、都市機能が分散する。中央集権化が進められた日本は首都の東京に都市機能が集中し人口規模が特に大きくなっている。
2009年度第3問
設問A
(2) 高齢化が進み福祉や介護産業の需要が増加し雇用機会も増加する一方、公共事業の減少により土木工事の件数が減ったため。
設問B
大都市圏のA県に比べ、地方のB県は高齢化という年齢構成の変化により公共サービスの需要が増加。産業の未発達や生産年齢人口の割合の少なさにより財政基盤が弱い市区町村の合併が進んだため。
- 2022.01.27 10:48
- いぇい
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