ブログ
2025.02.21
1936
2024年度たつじんオープン添削投稿フォームになります。第50回の分をこちらに投稿してください。
コメント
ドゥーチェさんこんにちは。では添削いたします。
>‘20 第3問
>設問A
(2)
東西統一後、経済停滞で失業者が増えた東部から商工業盛んな西部へ雇用機会や高賃金を求め人口移動。(47字)
人口は東部で減、西部で増。(13字)
適切です。本問の場合、字数的に「社会主義」だったことは入れにくかったでしょうね。東大ドイツの統一について政治的な側面ではなく、経済的な面から解析することが求められていました(そして地理は経済の科目です。なぜなら、人間の手の及ばない事象を解析する科目が地理であり、人間が作り出した政治ではなく、人間がどうにもできないお金の流れこそ地理の命題となるのです)
>(3)
【案①(南部に言及しない)】
産業構造の転換に後れた北部は石油危機後に基幹産業だった鉄鋼業や造船業など重工業が国際競争力を失い人口停滞。(53字)
近年はサービス経済化が進み先端産業発達など産業構造が高度化し南北格差縮小。(37字)
【案②(南部に言及する)】
産業構造転換に後れ鉄鋼・造船など重工業が国際競争力を失った北部は人口停滞も南部は自動車・先端産業発達で人口増加。(56字)
近年サービス経済化が進み産業構造高度化。北部でも雇用が増え格差縮小。(34字)
(↑大手予備校の解答がどれも南部に言及していたので、強いて答案に盛り込むなら…ということで一応【案②】も作成してみました。)
ありがとうございます。そうだったのですね、南部に言及する解答が多かったのですね。個人的な見解としては「南部は現状維持」という印象だったのですよ。南部バイエルン州ミュンヘンは伝統的なビール工業で知られる都市ですが、従来より自動車工業や精密機械工業、ICT産業が発達していました。基幹産業である鉄鋼や造船が衰退する北部(ハンブルクやブレーメン)、鉄鋼業からの転換が図られる北西部(ルール)に対し、脱工業化を進めるドイツの中でも工業生産力は維持されてきた地区に思っています。南部が伸長したというより、北部や北西部の衰退、そして貧困地区の東部が統一ドイツに編入される中で、相対的に地位が上昇しているという解釈でした。
ただ、ドゥーチェさんの回答においても過度に南部を持ち上げようとせず、あくまで従来よりの「自動車・先端産業の発達」ということでソフトな表現にとどめられており、とても好ましいと思います。ドイツの産業についてはとにかく「ルールにおける産業構造の転換」に焦点を絞ってみてくださいね。鉄鋼業といった製造業(第二次産業)から、ICT産業(第三次産業)への転換を強調してもらえればいいかと思います。
>(4)
EU拡大で東欧からの労働移民、(15字)
内戦でシリアからの難民が増加。(15字)
こちらもいいですね。2010年代ということでシリアのみ強調すればいいかと思っていましたが、字数が許せば東欧からの流入も述べるべきでしょう。
>設問B
>(1)
農業・軽工業に代わり高度経済成長期に太平洋ベルトで重化学工業発展。(33字)
雇用機会の増えた三大都市圏へ農村部から余剰労働者流入。(27字)
なるほど、「軽工業」も加えているのですね。これはいい観点と思います。実は戦前(1930年代)は阪神工業地帯こそ日本最大の出荷額を誇っており、その理由として繊維産業があったのです。綿花を輸入し衣服を生産する(大阪は東洋のマンチェスターと呼ばれていました)。高度経済成長期以降の京阪神の落ち込みは、自動車工業がなかったことに加え、そもそもが繊維工業の中心地だったことにあるのです。
>(2)
バブル景気下の国際化・情報化の進展で諸機能が一極集中した東京圏は増加。(35字)
電気機械など重工業が中心で産業構造の転換に後れた大阪圏は減少。(31字)
自動車産業が発達し雇用が保たれた名古屋圏は停滞。(24字)
なるほど、ここでバブル景気を入れているのですね。言われてみればバブル期の1980年代後半には大阪ではすでに人口が減っていますね。名古屋も停滞しています。東京の一極集中はこの時代には顕著だったのでしょうね。また大学に入ってからの研究テーマにしてみたらおもしろいと思いますよ。
>(3)
地価高騰や住環境悪化で都心部から郊外へ人口移動が顕著だったが(30字)
バブル崩壊後は地価下落や再開発で郊外から都心部へ人口が回帰。(30字)
いいですね。2トピックの典型的な問題です。
>【余談】
この一年間、ご丁寧に(しかも無料で!)添削していただき本当にありがとうございました。
真剣に「地理」という科目に向き合えてとても楽しかったです。
こちらこそありがとうございました。「無料」というのがいいのですよ(笑)今の受験はお金がかかりすぎです。私は受験業界を変えたいと思いますし、ドゥーチェさんも「お金をかけない」受験を成功させ、世界を変えていきましょう。
>不思議なことに、先生のチャンネルに出会ってからの3年間(実は高1からの古参です笑)は、「たつじん先生から地理を教わった」というより、「たつじん先生とともに楽しく地理を学んだ」という印象なんですよね。
おかげで、世界の様々な社会的事象を、地理的思考をもって俯瞰できるようになりました。
そうだったのですか、それはとても嬉しいです。私も東大はじめさまざまな入試問題に真剣に向き合うことにより多くのことを学びました。アウトプットよりインプットの方が多いのが受験指導というミッションなのだと思っています。
「地理的思考」などというものが本当にあるのかわかりませんが(笑)、ただ地理の本質が「点と点を結ぶ鎖」にあることは間違いないかと思います。そもそも私が地理に興味がなかったのが良かったのです。地理=旅行好きの先生ならば「この国に行った、こんなことがあった」という具象的な話で地理の授業が終わってしまいますよね。でもそれは「理」ではありません。私の場合は、地理が「おもしろくない」からこそ一生懸命「おもしろい」ことを探してみたいと思っているんですよね。地軸の傾きが農業を中心とした人々の暮らしに結びつき、1人当たりGNIという統計学の指標が現代の日本の衰退の理由づけになる。そういった「おもしろさ」をさらに追究していきたいですね。
>入試本番、地理に関しては、「東大最新作のお披露目にいち早く立ち会えるんだ!」という思いで臨もうと思います。
改めて、ありがとうございました。感謝しかありません。
その通りです。たつじんオープン添削に参加してくれたメンバーのみなさんの力は極めて高いですよ。採点者の先生はおどろくと思いますよ。入試は「力試し」ではないのです。入試は「確認」であり、現在の自分の力でどういった答えを導くことができるか、それを確かめるだけの作業です。さらに入試は「等価交換」です。自分に力に見合った大学にそのまま合格するだけなのです。自分2歳的な大学に受け入れられ(そしてドゥーチェさんも大学を受け入れるのです。なにしろ「等価交換」なのですから)。大学に入ってからの研究を高めるステップとして受験を利用してくださいね。
- 2025.02.24 16:22
- たつじん
‘20 第3問
設問A
(2)
東西統一後、経済停滞で失業者が増えた東部から商工業盛んな西部へ雇用機会や高賃金を求め人口移動。(47字)
人口は東部で減、西部で増。(13字)
(3)
【案①(南部に言及しない)】
産業構造の転換に後れた北部は石油危機後に基幹産業だった鉄鋼業や造船業など重工業が国際競争力を失い人口停滞。(53字)
近年はサービス経済化が進み先端産業発達など産業構造が高度化し南北格差縮小。(37字)
【案②(南部に言及する)】
産業構造転換に後れ鉄鋼・造船など重工業が国際競争力を失った北部は人口停滞も南部は自動車・先端産業発達で人口増加。(56字)
近年サービス経済化が進み産業構造高度化。北部でも雇用が増え格差縮小。(34字)
(↑大手予備校の解答がどれも南部に言及していたので、強いて答案に盛り込むなら…ということで一応【案②】も作成してみました。)
(4)
EU拡大で東欧からの労働移民、(15字)
内戦でシリアからの難民が増加。(15字)
設問B
(1)
農業・軽工業に代わり高度経済成長期に太平洋ベルトで重化学工業発展。(33字)
雇用機会の増えた三大都市圏へ農村部から余剰労働者流入。(27字)
(2)
バブル景気下の国際化・情報化の進展で諸機能が一極集中した東京圏は増加。(35字)
電気機械など重工業が中心で産業構造の転換に後れた大阪圏は減少。(31字)
自動車産業が発達し雇用が保たれた名古屋圏は停滞。(24字)
(3)
地価高騰や住環境悪化で都心部から郊外へ人口移動が顕著だったが(30字)
バブル崩壊後は地価下落や再開発で郊外から都心部へ人口が回帰。(30字)
【余談】
この一年間、ご丁寧に(しかも無料で!)添削していただき本当にありがとうございました。
真剣に「地理」という科目に向き合えてとても楽しかったです。
不思議なことに、先生のチャンネルに出会ってからの3年間(実は高1からの古参です笑)は、「たつじん先生から地理を教わった」というより、「たつじん先生とともに楽しく地理を学んだ」という印象なんですよね。
おかげで、世界の様々な社会的事象を、地理的思考をもって俯瞰できるようになりました。
入試本番、地理に関しては、「東大最新作のお披露目にいち早く立ち会えるんだ!」という思いで臨もうと思います。
改めて、ありがとうございました。感謝しかありません。
今週もよろしくお願いいたします。
- 2025.02.22 10:17
- ドゥーチェ
- 1935
- main
- 1937