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2025.10.17
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2025年度たつじんオープン添削投稿フォームになります。第30回の分をこちらに投稿してください。
コメント
とうまつさんこんにちは。では添削いたします。
>03-3
A
(3)機械工業が台頭し、水を大量消費する重化学工業の割合が低下した。産業構造が変化した。技術が発達し水の循環利用が進んだ。
キーワードがきちんと使えています。こちらのような順にすると論理的なつながりがさらに見えると思います。
「産業構造の変化が生じ機械工業が台頭したことで水を大量消費する重化学工業の割合が低下。技術が発達し水の循環利用が進んだ。」
産業構造の変化については下で詳しく説明していますので、よかったら読んでくださいね。
>B
(1)オイルショックで原油価格が高騰し、低燃費の日本車の需要が欧米市場で高まった。日本の輸出が増え貿易摩擦が過熱した。円高で日本の国際競争力が低下し、国内生産から現地生産へ転換した。
こちらも十分な回答です。「円高による国際競争力の低下」は発展途上国への工場進出でこそメインとなる理由です。もちろんここで使用するのは間違いではないのですが、次の(2)の問題との差別化をはかるためにあえてここでは外す選択肢があります。
いきなり「貿易摩擦」や「現地生産」という言葉が登場していますから、これを説明する一節を入れてみては?
石油危機による原油価格高騰で低燃費の日本車需要が欧米で高まる。日本車の輸出が増えるが欧米との間に貿易不均衡による貿易摩擦。その解消のため欧米に工場が進出し欧米市場での販売を目的として現地生産が始まる。
あくまで参考例のため
もしかして「貿易摩擦」や「現地生産」の意味が相手に伝わらないのではないか?と心配してみてください。地理の専門的な言葉を使った時には常に「この言葉は誰にもでわかる言葉なのだろうか」と不安に思うべきなのです。説明文のコツは「小学生にもわかる文章」です。「賢いと思われたいから賢い文章を書くのではない」のです。「幼い子供と同じ目線で語りかける」文章にしてほしいのですよ。
>(2)円高の進行と賃金の上昇により、日本国内での生産コストが上昇した。豊富な低賃金労働力を求めてASEANや中国へ工場が進出した。日本市場向けの海外生産がさかん。
とてもいいですね。こちらは(1)に比べてとてもわかりやすい文章になっていますよ。完璧です。
>B(2)は字数に余裕があったのにA(3)では字数内に収めるのに必死でした。
いいですね。東大論述問題は基本的には「字数が足りない」ですよね。字数内に収めるテクニック(体言止め。短文に切る。接続後を使わない。理由だからといって「から」や「ので」は使わない)を身につけていきましょうね。
>水の循環利用が進んだのは、再利用に必要な技術が普及したことで、新たに取水する工業用水量が大幅に減少したからだと考えました。
>むしろこちらがメインで、重化学工業が衰退したのは産業構造の転換ではなくオイルショックが主要因な気もします。
素晴らしいですね。まさにその通りです。ただ、それを言ってしまえば重化学工業も衰退には公害問題の発生など他の要因もあり、オイルショックも含めて多様な理由によって産業構造の転換という結果が導き出されたとも言えますね。
つまりこういった形です。
「公害問題・オイルショック」→「産業構造の転換の必要性が高まる」→「重工業の衰退」
「産業構造の転換」は非常に重要なワードです。なぜならば「数字」の概念が含まれているからです。
この場合の数字は1人当たりGNIであったり、生産性であったり、生産コストのことです。経済成長により1人当たりGNIが向上し、賃金水準が上昇します。鉄鋼業や石油化学工業(鉄鋼やプラスチックを生産しますよね)からは素材が生産され、これは付加価値の低いものです(要するに値段が安い)。
しかし、いつまでも素材生産ばかりに特化していれば収益性は低くなります。電気機械や自動車工業、さらには電子部品など付加価値の高い工業製品の生産へと主産業を移行する必要性が生じます。
言い換えればこういった感じでしょうか。「経済成長による高賃金を支えるため、より利益を生みやすい高付加価値の生産へと産業構造を転換する必要がある」ということです。
もちろん今も日本では鉄鋼もプラスチックも多く生産され、決して素材型の重工業が完全になくなったわけではありません。しかし現在はそれらの地位は低くなり、高付加価値の機械工業へと主産業がシフトしています。こういった状況を「経済=数字」の側面から理解してほしいのです。
さらにこれには続きがあります。日本はさらに経済成長によって1人当たりGNIを上昇させようとしています。つまりこれは賃金水準を上げることと同意語です。
ただ、政府が企業に対し「賃金を上げろ」といったからといって無条件に上がるものではありませんよね。やはりそこには社会構造、そして経済構造の変革が必要になります。
例えば「生産性の向上」という言葉をよく聞くとは思いますが、これはどういったことでしょう?労働生産生を考えれば「収益÷労働コスト」ですから、例えば「時短」によって労働生産性は上がります。だらだら残業を続けるより定時でパッと帰りなさい、ということです。でもこれってそもそも仕事量が増えてきたら残業せざるを得ないこともあるでしょうし、時差を前提とした多国籍企業のオフィスならば時間外の労働も当たり前かもしれません。残業を減らすだけでは生産性を上げる根本的な方策になりません。
さらにいえば「リストラ」があります。今まで10人で仕事していたものを5人で済ませることができれfば、労働生産性は倍になりますよ。これはカルロス・ゴーンが日産で大胆なリストラを実行し企業再生を成功させたことに端を発し、21世紀の日本において一般的に行われてきたことです。リストラは生産性を上げるための「善後策」として高い評価を得てきました。今でもいろいろな企業において自認削減が行われています。しかしこういった「クビ」が日本人の生活を豊かにするのでしょうか。生活を豊かにするために政府が生産性の向上を訴え、それにしたがって企業がリストラを進めるならばあまりにも本末転倒と思いませんか?一部の富裕層に特権を与えることで経済を回そうというのです。
ではどうしたらいいのでしょう?それは労働力という分母ではなく収益性という分子を増やすことによって値を上げればいいのですよね。収益性を上げるにはどうすればいいか?それは生産物の付加価値を上げるのです。要するに「安い」ものではなく「高い」ものを作ればいいのです。いつまでも衣服を作っていれば貧しいままです。素材工業でも限界はあります。機械や自動車生産ですら賃金上昇には結びつかないのです。さらに収益性の高い、高付加価値の産業へと国全体の主産業をシフトしていくのです。それは知識産業の分野であり、ICTや医療を始めとする先端技術産業ですよね。
この状況を1970年代に当てはめるならば、日本が経済成長を続ける限り(GNIは世界2位となり、さらに1人当たりGNIも上昇します)鉄鋼業や石油化学工業といった素材生産を主とする重化学工業には限界が生じ、より高度な技術をもちいた電気機械や自動車へと転換することが求められたということなのです(いうまでもなく現在はさらに一つ先へと段階が進んでいますね。電気機械や自動車ですら「収益性の低い」産業として切り捨てられ、高付加価値の先端産業へとシフトする必要があります)。
オイルショックや公害といった個別の事象に注目するのは公民や歴史科目に任せてしまいましょう(笑)地理はよりマクロな視点で社会現象を捉え、事象を抽象化・一般化するのです。そうした抽象化や一般化の過程において普遍的な法則性が導き出され、我々は未来を「予見」できるのです。
知識を詰め込むのではなく、そこから考えられる因果関係や論理性を重視してくださいね。それが地理という科目なのですよ。
今回は簡単な説明でしたが、基本的な部分は理解してくれたと思います。地理は「文系的な知識」ではなく「理系的な知性」によって事象を解析する科目です。とうまつさんもこういった理系的な思考をさらに養い、現代世界の理解に繋げてほしいかと思います。
次回も期待しています。
- 2025.10.21 16:05
- たつじん
’03-3
A
(3)機械工業が台頭し、水を大量消費する重化学工業の割合が低下した。産業構造が変化した。技術が発達し水の循環利用が進んだ。
B
(1)オイルショックで原油価格が高騰し、低燃費の日本車の需要が欧米市場で高まった。日本の輸出が増え貿易摩擦が過熱した。円高で日本の国際競争力が低下し、国内生産から現地生産へ転換した。
(2)円高の進行と賃金の上昇により、日本国内での生産コストが上昇した。豊富な低賃金労働力を求めてASEANや中国へ工場が進出した。日本市場向けの海外生産がさかん。
B(2)は字数に余裕があったのにA(3)では字数内に収めるのに必死でした。
水の循環利用が進んだのは、再利用に必要な技術が普及したことで、新たに取水する工業用水量が大幅に減少したからだと考えました。むしろこちらがメインで、重化学工業が衰退したのは産業構造の転換ではなくオイルショックが主要因な気もします。
今週もよろしくお願いします。
- 2025.10.18 15:00
- とうまつ
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