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2017.10.27

たつじんもこんな問題を間違えているのです(2)

 

[3]次の図2中のA〜Dの海域・地域では、様々な環境問題が発生している。それらの環境問題について述べた文として適当でないものを、下の①〜④のうちから一つ選べ。(2009年度地理B追試験)

 

① A海域では、産業・生活排水による水質汚濁の問題がみられる。

② B地域では、過剰な灌漑による土壌の塩類化(塩性化)の問題がみられる。

③ C地域では、過耕作や過放牧による土壌侵食の問題がみられる。

④ D地域では、過剰な農地開発による熱帯林破壊の問題がみられる。

 

 

 

①と④は問題ないわけです。Aの北海は、極めて浅い水域(大陸棚が広がっているのです)でありそもそもの水量が少ないこともあって、汚染されやすい海域ではあります。海底油田の開発による海洋汚染、パルプ工業による排水の流入、(周辺が人口密度の高い地域であることから)生活排水による汚濁など、さまざまな要因が考えられます。

さらに④。これも正文ですね。ブラジルの熱帯雨林は、サトウキビ農園や肉牛飼育用の牧場などの開発によって、森林が失われています。

ただ、ここで困ってしまうのだ。②と③の判定が難しい。どっちも誤っていそうなのだ(涙)。

まず②について。「過剰な灌漑による土壌の塩類化」は乾燥地域において生じる環境問題で、砂漠化の原因ともなることで知られています。伝統的な灌漑農業地域(オアシス農業地域)では、点滴灌漑などの節水農法によって土壌の塩類化を防いでいます。ただ、Bのエリア(ナイジェリア南部でしょうか)は、熱帯雨林であり、農業区分でいえば「焼畑農業」地域に当てはまるのです。草木灰を利用してキャッサバを栽培します。「土壌の塩類化」というのは、強アルカリ性になるということなのですが(乾燥地域の土壌はアルカリ性と知っておいてもいいでしょう)、熱帯の土壌であるラトソルは酸性であり、塩類化が生じるわけがないのです。これ、誤文でしょう!

ただし、③もすごく怪しいんですよ。「過耕作や過放牧」と「土壌流出」がキーワードです。

まず「過耕作と過放牧」について。連作など土地に負担をかける農業を行うことで地力が低下し、草すら生えなくなってしまう。家畜を過剰に放牧し、草を根こそぎ食べ尽くしてしまう。いずれも砂漠化の要因であり、サヘル地域でとくに顕著にみられる事例ですよね。ただ、砂漠化そのものはサヘル地域限定の事例ではなく、世界中の半乾燥(ステップ)地域の全てにおいて生じているとみて間違いありません。なるほど、オーストラリアは降水量の少ない乾燥大陸であり、ステップ地域も広がっているだろうし、砂漠化が生じることは否定できない事実でしょう。ただ、過耕作と過放牧がどうなのかなっていう。過剰な耕作や放牧は、高い人口増加による食料増産の必要性に起因すると考えることが一般的。アフリカ(サヘル地帯)のような人口爆発が生じている地域でこそ過耕作と過放牧が深刻なのであって、それがオーストラリアに該当するのだろうか。企業的な農牧業が行われているオーストラリアの状況は、アフリカとは全然違うようにも思えるのですが。

さらに「土壌流出」。これも乾燥・半乾燥地域でみられる環境問題で、とくに深刻であるのが(テストによく出題されるのが)、中国・黄土高原とアメリカ合衆国・中央平原。黄河上流部の黄土高原は砂漠化が進む地域でありますが、とくに風の影響によって細砂が流出し、黄河に流れ込んでいます。アメリカ合衆国においても森林が伐採され、耕地化が進んだことで、雨や風(比較的降水量の多い東側のプレーリーでは雨により、降水量の少ない西側のグレートプレーンズでは風により)地表付近の土壌が侵食され、失われていきます。果たしてこれがオーストラリアで生じているのでしょうか。日本のように森林が深く根を張る土地ならば、土壌侵食・土壌流出の被害はほとんど生じないのですが、森林のみられない砂漠やステップ、大規模な耕地などにおいては顕著な環境問題となります。ただ、オーストラリアは斜面は少ないので、土壌がこぼれ落ちるようなケースは少ないようにも思うのですが。

 

というわけで、僕はこのように考え、正解(誤文)を②と③とで徹底的に迷ったのです。で、結局、③を答えにしてしまったような。。。解答をみたら、②が正解でした(涙)。

考え方としては上記のもので合っていたと思います。ただ、③に関する解釈が甘かった。オーストラリアは広くステップが分布する(牧場・牧草地面積割合が極めて高いのです)国なのですが、こうした土地においては必ず砂漠化が生じています。そしてそこで盛んに農牧業が営まれている以上、「過耕作」や「過放牧」が行われているとみて間違いありません。さらにそうした状況で砂漠化が進めば、風や雨の影響によって地表面の土壌が流れ出す環境問題は必ず起きるのです。

「半乾燥地域(ステップ)においては必ず砂漠化が生じる」ことが何より大切で、「砂漠化の要因として過耕作や過放牧がある」ことも絶対に知っておくべきです。そして、「植生が失われ裸地になった土地においては、風雨によって土壌流出・土壌侵食が生じる」ことをぜひ押さえておきましょう。オーストラリアが乾燥大陸である以上、③のような事例は常に深刻なのです。

ちなみに、ここでは「裸地」という言葉を用いましたが、裸地と砂漠は同じ意味ですので、知っておくといいでしょう。また、「土壌流出」と「土壌侵食」という言葉を使っていますが、これらも同じ意味です。区別の必要はありません。

 

なお、2012年度地理B本試験では以下のような問題も出題されています。

 

[参考1]農業は、自然環境の影響を受けるが、その一方で、人間は水不足などの不利な条件を克服し、作物の栽培地域を広げてきた。ただし、こうした農業活動は、環境に負荷も与えている。世界の灌漑農業について述べた文として下線部が適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012年度地理B本試験)

 

① アメリカ合衆国のグレートプレーンズでは、センターピボット灌漑によるトウモロコシや小麦の栽培が行われてきたが、これによって地下水位が低下している。

② イランの乾燥地域では、カナートとよばれる地下水路を利用して麦類やナツメヤシの栽培が行われてきたが、近年では、動力揚水機が普及し、土壌の塩性化(塩類化)が生じている。

③ オーストラリアのマリー(マーレー)・ダーリング川流域では、灌漑によって小麦の栽培が盛んになったが、一方で、土壌の塩性化(塩類化)が問題となっている。

④ 中央アジアのアムダリア川とシルダリア川流域では、灌漑によってサトウキビの栽培が盛んになったが、一方で、アラル海に流入する水量が極端に減少している。

 

正解は④で、「サトウキビ」を「綿花」に改めてください。アラル海の縮小の原因は、旧ソ連による綿花の大規模栽培にあるのです。

ポイントは③です。「マリー・ダーリング川流域」は、上の問題のC地域に該当します。とくにマリー川という名前は覚えておいてください。代表的な外来河川(乾燥地域を流れる川)です。降水量の少ない地域ですが、大陸東岸の多雨地域を流れる河川をせき止め、トンネルによって山脈の地下を導水することによって灌漑がなされています(スノーウェーマウンテンズ計画)。これによりマリー川流域は大規模な企業的穀物農業地帯として、小麦が盛んに栽培されるようになりました。

ここで重要なキーワードはもちろん「土壌の塩性化(塩類化)」ですね。過剰な灌漑によって、地中の塩類が地表面へと持ち上げられ、土壌が強アルカリ化します。これが塩害であり、やがて砂漠化へとつながり、さらに土壌侵食の被害も生じるのでしょう。オーストラリアにおいてもこうした環境問題が深刻化していることを想像しましょう。

 

 

[4]次の表2は、中国、デンマーク、ペルー、ポーランドにおける農畜産物について、生産額が最大のものを1980年と2004年について示したものである。表2中のF〜Hは、牛乳、ジャガイモ、豚肉のいずれかである。F〜Hと農畜産物名との正しい組合せを、下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2011年度地理B追試験)

 

表2

 

1980年

2004年

中国

デンマーク

G

ペルー

鶏肉

ポーランド

G

FAOの資料により作成。

 

 

G

牛乳

ジャガイモ

豚肉

牛乳

豚肉

ジャガイモ

ジャガイモ

牛乳

豚肉

ジャガイモ

豚肉

牛乳

豚肉

牛乳

ジャガイモ

豚肉

ジャガイモ

牛乳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これも難しかった!っていうか、今だに納得がいっていない。

まずデンマーク。農業区分でいえば「酪農」地域に含まれ、乳牛の飼育や生乳および乳製品の生産が行われている。また、「豚肉」の重要な輸出国として知られ、豚の排泄物は肥料だけでなく、バイオマスとしても利用されている。まず「デンマーク=牛乳・豚肉」となる。

さらにペルー。この国の高原地帯は「ジャガイモ」の原産地。インカ帝国はジャガイモを周囲の国に分け与えることで領土を拡大したとも言われている。「ペルー=ジャガイモ」でいいだろう。

さらにポーランド。混合農業地域であり、やせた土地で農業を行うため、豚の排泄物が用いられた。ライ麦とジャガイモの輪作によって豚が飼育される。「ポーランド=ジャガイモ・豚肉」なのだ。

ちなみに中国は、世界最大の「ジャガイモ」生産国であり、同じく世界最大の「豚肉」生産国でもある。とくに豚については、世界全体の飼育頭数のうち約半分を中国だけで占めているほどの圧倒的な豚飼育国。「牛乳」ももちろん生産は多いものの(人口が多いからね)、しかしインドやアメリカ合衆国の方が多い。中国は「豚がメインでジャガイモも多い。牛乳はそれほどでもない」というよみが成り立つ。

以上のようなことを考慮して考えるに、ペルーのHはジャガイモなのだろう。ポーランドにもHが含まれていることからこれは納得。さらにポーランドはHからGに移行している。これを豚肉と考えるのは容易だろう。とくに本問の場合、「額」であることが大切で、そもそもの価格としてジャガイモより豚肉が高いことも考慮されるべきである。ポーランドにおける「ジャガイモ→豚肉」の流れは自然。

そうなると残ったFは牛乳。デンマークではトップ品目が豚肉から牛乳に変化しているが、これについてはとくに否定するべき点も見つからない。

そして中国では米から牛乳に変化。中国は牛乳生産に特筆するべき部分はないが、そもそもの価格も高いのだろうか。これはこれで納得できなくないかな。②が正解やな。

 

と思って解いていたら、大間違い!正解は⑤だったのだ(涙)。これ、マジで全然わからないよ。中国は「米から豚肉」、デンマークは「牛乳から豚肉」、ポーランドは「ジャガイモから牛乳」なんだって。すでに述べたように中国は豚肉の生産において圧倒的なシェアを占めているから、豚肉がトップになっているのはなるほど当然なんだろう。でも、ポーランドがなぁ。。。ポーランドは皇后農業の国で、とにかく「ジャガイモ・ライ麦・豚」の国なのだ。それが、最大の生産額の農畜産物として牛乳を挙げなくてはいけないとは。これは難しいわ。というか、問題として不適切に思う。こういう問題もあるのやなぁと諦めるしかないわな(涙)。

 

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